西村眞悟の時事通信 平成16年9月20日

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しかし、小泉総理が北朝鮮金正日に、ここを問い詰めた形跡はない。反対に、二回目の五月二十二日にいたっては、八名の再調査を約束した金正日の「誠意を評価」して帰ってきている。従って、この小泉氏が交渉当事者であるから、次第に拉致被害者は十三名の範囲に縮減されてきている。さらにいうならば、被害者十三名のうち、帰国できた五名とその家族のことだけが交渉対象に縮減されていたのが五月二十二日の二回目訪朝であった。そのとき、死亡したとされる八名と百名をはるかに超えると思われる拉致被害者は、切り捨てられる方向へ流されていたのだ。

そうであるからこそ、やはり、この際言っておかねばならない。前の四月三十日の日比谷野外における「拉致被害者救出集会」は、参議院選をひかえて再訪朝を熱望する小泉内閣と小泉氏をピョンヤンに呼び込んで「みやげ」をせしめようとする北朝鮮の意向に、期せずして(期してかもしれない)見事に合致した一種の「クーデター」であった。

繰り返す。総理再訪朝反対が、家族会の総意として発表されていた。
そういう中での四月三十日の日比谷での集会であった。そのとき、演壇にたった家族数名が、突然、「孫を取り戻すために、小泉さん、北朝鮮に行ってほしい」と言い出したのである。それも、大正期の国政演説会風に「宰相の心構えを説く」というような口調である。いうまでもなく、その発言は、事前に家族会や議連で一致した意思と全く違うものであった。(さらにいうまでもなく、発言者は無邪気で、ただ思いを素直に述べているという風で、意図的に家族会の合意を裏切って政治的効果を狙うというものではなかった)しかし、「小泉さん、ピョンヤンに行って、孫を連れて帰るべし」という声は、その集会の決議のように流布していき、二週間後の政府の総理再訪朝発表まではあっという間であった。
私は、この流れを見ていた。これは一種の「クーデター」であると思っている。誰が仕組んだかは,おおよそ分かっている。

前回の国民大集会に参加した時に、壇上の蓮池透さんが「小泉総理は北朝鮮でも何でも行って家族を取り戻してくればいいじゃないですか!」と言った途端会場の観衆がどよめき、拍手がまばらになった瞬間を見た。明らかに「あれ、この集会は小泉訪朝に反対する主旨じゃなかったのか?」という動揺だった。その時は「まあ、家族それぞれで状況も違うから、そうした発言もしょうがないかな」とあまり考える事も無く流してしまっていた。というわけで、こんな緊張に満ちた場面があったとは全く気付きもしないで恥ずかしく思う。
しかし、この「クーデターを仕組んだ」人間とは、まず平沢勝栄なのだろうな。反吐が出そうだ。これで、今度の小泉政権の組閣で平沢が登用されるような事があったら、この行動の論功行賞だという事だ。全く反吐が出る。