小林よりのりは「何を」デマと呼んだのか?

昨日や一昨日のエントリーで述べたように、議論の元となったSAPIO9/27号「ゴー宣・暫」を皆そもそもちゃんと読み込んでないんじゃないの?という話。ページを全部スキャンするのも面倒なので、簡単な文章もしくは要点で抜粋したいと思う。

1p目:小泉首相終戦記念日における靖国参拝を評価。
2p目:小泉は嫌いだが、靖国参拝をしないと明言するサヨク政治家はもっと嫌い。
3p目:靖国参拝批判を続ける事は、中韓にとって有効な外交政策で将来に至っても捨てる事が出来ない。
4p目:時期総理は例大祭でもいいから、中国の圧力に屈せず参拝して欲しい。
5p目:マスコミのおかげでかえって8月15日の参拝客は盛況だった。
6p目:TVで論客達が、日本はSF条約11条で「東京裁判を受諾して独立した」という前提で議論をしていた。
7p目:姜尚中サヨク学者ですらもJudementsが「判決」だと認めている。
8p目:当事者を拘束するのはその判決の中でも「主文」であって「理由」ではなく、これは文明諸国の法の一般原則だ。
9p目:SF講和条約11条はアムネスティ(大赦)の慣習法を破ってまで作られた異常なものだったが、それでも赦免などの手続きも定められていた。
10p目:11条とは刑の執行や条件によっては停止して釈放してよいものだった。
11p目:「判決」を受諾した事が「判決理由東京裁判史観」を強制されたわけではないが、TVに出演した麻生太郎議員が裁判を受諾したと語ってしまっているが、外務大臣たる政治家がそんな認識では困る。
12p目:講和独立後の政治家は社会党に至るまで「戦犯」の汚名を雪ごうとしたが、安保闘争の辺りから自民党はアメリカを発言を控えてしまい、左翼につけこまれた。
13p目:独立したら「主権」と取り戻したという事であり、歴史解釈権を取り戻す努力すべきなのに、麻生に至るまでの自民党議員が自虐史観に陥って国際社会の反発を必要以上に恐れている。
14p目:マスコミは東京裁判史観安倍晋三に押し付けようとして圧力を掛けている。
15p目:ネットにこのようなメディアとの共闘を求め11条の件でデマを流している知識人を攻撃せよと呼び掛けた。
16p目:マスコミの同調圧力を破壊し、11条を裁判受諾とする売国行為と戦え。

とまあ、こんな感じです。つい先ほどまでの、この問題に関する議論では、単純に「小林が受諾したのは“裁判”ではなく“判決”だ、と言っている」といった点ばかりが強調されて、その前提となる「日本は“主文”に従ったのであって“判決理由”を認めたわけではない」という小林の主張がすっぽり抜けたものになっている。小林の発言を最初に擁護した人とそれを批判している人のどちらも、どうも「裁判or判決」以外の部分をまるで読まずに討論を始めてしまったかのように思える。
 
とりあえず、再び議論とその流れを説明してみます。
 
◆Apes! Not Monkeys! はてな別館『箸にも棒にもかからぬ愚論、「受諾したのは判決だけ」』
(id;Apeman:20060908#p1)

このネタに早速反応しているのが野良猫氏。

野良猫 『「第11条を受諾したんだから、東京裁判の趣旨と判決理由も全て受け入れたんだ」という主張をしているブログは時々みかけますね〜。小林よしのりの「お墨付き」がついたことで、そういったサヨク系ブログと彼らが信じる知識人の場所が炎上していくかもしれません。
(http://d.hatena.ne.jp/myhoney0079/20060906/p2#c 以下同じ)

これに対して私がコメント。

Apeman 『>第11条を受諾したんだから、東京裁判の趣旨と判決理由も全て受け入れたんだ」という主張をしているブログは時々みかけますね〜。
 
それが日本政府の公式な立場でもありますね〜
 
平成18年02月14日 衆院予算委員会 発言者:麻生外相
(略)
平成17年06月02日 参院外交防衛委員会 発言者:政府参考人(林景一)
(略)

これに対する野良猫氏の返答がすばらしい。「それは林景一という人が間違ったというだけの話ですね」だそうだ。わぁお! 麻生外相のことはスルーしているのはご愛嬌。

と「麻生議員だって、裁判を受諾しているって言ってるじゃないか」とApeman氏が国会会議録検索システムで探し出した情報で野良猫氏を攻撃しているが、そもそも麻生外務大臣の認識については今回のゴー宣・暫11p目で触れられている。その後、次々と自民党議員の発言も引っ張り出してきて突きつけるが、それも13p目で取り上げられている。だから、野良猫氏もそれで反論すれば良いものを「あくまで一個人の議員が間違っているだけ」という認識で反論していくものだから論理が破綻して、結果Apeman氏につけこまれる結果となった。野良猫氏はApeman氏にSAPIOを購入し、読んだ上で具体的に反論する事を薦めたが、Apeman氏はそれを拒否したので議論は停滞。野良猫氏の方も、麻生についての指摘を何故スルーしたのかも疑問。麻生ファンで、それについて触れたくなかった可能性もある。しかし一方、Apeman氏に同意する人達も『小林の「日本は“主文”に従ったのであって“判決理由”を認めたわけではない」』論を否定するブログの紹介を、各所コメント欄で教えてくれているのにも関わらず、肝心の氏はどうもあまり目を通していないご様子だった。「裁判or判決」論の前に、小林のこの主張について議論しなくて何を議論するんだろう?それに小林の言う“デマ”は「SF11条で東京裁判史観を受け入れた=靖国参拝反対&A級戦犯分祀すべし」って事だよね。全体の文脈からすると。
 

しかし、こんなバナーを貼って『「サンフランシスコ講和条約によって日本が受諾したのは戦犯裁判の判決だけで、裁判そのものではない」という主張を「箸にも棒にもかからぬ愚論」と評するキャンペーン』を始めて「小林信者よ、かかってこい!」ぐらいな事を言ってたはずだが、あれ、消えちゃってる?グーグルのキャッシュにも残っていない。俺の記憶違いかなー*1。とにかく野良猫氏の主張と小林の主張をごっちゃにしてキャンペーンを始めたはずなのに、いつの間にかそれを引っ込めてますね。きっと本人も、自分が混乱していた事に気付いたのでしょう。そもそもこの人は

それにしてもあれだね。「裁判全体を受け入れた」という主張に賛成しないのは勝手だけど、日本政府がとっている立場と同じことを言ったら「デマ」呼ばわりとはね(笑)

と言っていた時は、野良猫氏のみを攻撃しているのだ、という論調の筈だったけど。結局一体何がやりたいんだ?
 
『「東京裁判なぞ受け入れられん! と主張する人々は、じゃあ「歴史のif」を認めるとして(ポツダム宣言以降の時期において)一体どんな戦後処理を構想するの?」に関してご意見募集、というキャンペーン』にすり替えちゃったみたいですけどね。12・13p目を読んで、それに反論すりゃ手っ取り早いのにねー。
 
◆〜ん、こりゃ「不可」ですねぇ。
(id:Apeman:20060912#p2)
小林よしのりは1年前にあらかじめ論破されていた
(id:Apeman:20060913#p2)
ここらへんで初めて、小林の「日本は“主文”に従ったのであって“判決理由”を認めたわけではない」という主張に反論するブログを知り、下記のブログを勝ち誇ったように紹介。
 
◆孤高「現在の自分の理解」
(id:myhoney0079:20060911#p3)
◆+ C amp 4 +「サンフランシスコ講和条約11条解釈について、ちょっと入門してみる」
(id:swan_slab:20050807#p1)
あのー、id:swan_slab氏は9月12日以前の8日にApeman氏のコメント欄で自身のブログの「小林の主張(根拠は佐藤論文)を崩す見解」を紹介しているんですが*2。今回のゴー宣・暫をちゃんと読み、id:sawan_slab氏の折角の好意を一度目できちんと受け取っていれば、今回のようなマヌケな事態は起こらなかったのに。これだけフォローしてもらって(しかもネット右翼のカリスマに)本人は議論して勝ったつもりでいるから非常にタチが悪い。今頃「論破されていた!」じゃねーよ(笑)。
 
というわけで、結論としては「少なくとも、この議論に参加しようとする人間は対象となるものをちゃんと読んで、その内容を把握しようや」というお話でした。まあ、俺でも小林のこの「主文or理由」論に突っ込めるところがあるし、元々そうした字句の解釈で論争するるのには無理がある、という事を昨日も述べたけれども。後、小林の主張で大事な所は「歴史解釈権」を取り戻せ、ってとこだよね。受諾したのが“裁判”だろうが“判決”だろうが関係ねーよ。

*1:もしこれが間違っていても謝罪はするけど賠(ry

*2:正確にははてなブックマーク