“闘い”から逃げるゴマカシ

拉致問題について話し合う日朝部会は、不調のまま終了した。この件について触れられていない(日本側は含まれていると強弁するが)日朝平壌宣言を下敷きにしている以上、当然の結果であった。むしろ、日本側から提案した「拉致問題と国交正常化を切り離した分科会」をも、北朝鮮側から拒否してくれた事は僥倖であった。米朝の関係が修復に進む中、日本の言い分を聞く必要など無し、ゼロ回答で十分と判断したのだろう。だが、拉致問題の“解決”どころか“進展”で支援が行なえるようハードルを下げていたにも関わらず、ゼロ回答ではさすがに日本側もこれ以上引けなかった(勿論、俺はハードルを下げる行為自体に反対していたわけだが)。寺越武志さんを拉致認定する事なく、特定失踪者からの追加認定も松本京子さんただ一人、“再調査の要求”という無意味どころか逆に被害者が危険な立場に追い込まれかねない約束を取り付けようとした愚かな行為。安部政権が採ったこの手法には目を塞ぎ、北朝鮮親北マスコミやヤマタクを非難していればよい、という人は救出運動支援者の中にも多い。
 
もし「“拉致問題の全面解決”を前面に掲げる安倍さんが、家族会の方々を裏切るわけが無い!」と言うのなら、平壌宣言の踏襲まで含めたこれらの行為の説明が出来るのか。たぶん、その能力はこれらの人には無い。どこかの掲示板やSNSでコソコソと反論にもならぬ誹謗中傷を書き連ねているのが関の山。ただ小泉・安倍マンセーしている方が楽だからね。もしくは「これは北朝鮮を釣る壮大な罠だったんだよー!!」「な、なんだってー!?」とMMRごっこに興じるかだけ。そんな人達は、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博さんらが政府からの支援を断り、救う会の幹事を辞任した事の意味を少しでも考えてみた方が良い。まあ無理だろうけど。
 
ただ、安倍総理自身が完全に裏切ったか、というとそこまでは思ってなくて、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと決断力に欠き、党内・閣内における政治基盤の弱さが、外交政策におけるあの優柔不断さに繋がってしまっていると思う。拉致議連はまだ望みを残しているか。少し前、ある自民党の地方議員の方と話す機会があったが、その人は郵政民営化反対論者であるし、むしろ反小泉だったと言ってもいい。しかし「やはりあの決断力は素晴らしかった、安倍さんも見習って欲しい!」と熱く語られると、こちらとしても頷くしかなかった(苦笑)。ま、以前の日記で「小泉の郵政民営化の時ぐらいの独善さで拉致問題に当たれ!」と書いた事はあるが。
 
それを踏まえた上で、救出運動支援者はどっかの官邸幇間記者のプロパガンダに踊らされずに「あんた一体何やってんだ、おかしな事したら次の選挙で勝たせてやらないよ!」という突き上げを常に行なっていく必要がある。ただ「安倍さんが負けたら拉致問題の解決は遠のいてしまう。だから批判は控えて応援し続けましょう!」ではなく、常に厳しい目を向け続けねばならない。
  
辺真一のコリア・レポート 3月9日(金)

「毅然たる外交」を云々するならば、北朝鮮の「不誠実な対応」に怒り、席を立つべきは日本の方ではないでしょうか。北朝鮮が午後の協議をやらないと言うなら、「翌日の国交正常化交渉を拒否する」と、どうして強気に出られなかったのか理解に苦しみます。日朝協議が進展しないで困るのは、北朝鮮の筈ではなかったのでしょうか。塩崎官房長官にいたっては「具体的成果は得られなかったが、最低限、互いの立場を確認しあったことは一定の意味があった」と、自己満足していましたが、昨年2月に北京で開かれた日朝並行協議で互いの立場は確認されていなかったのでしょうか。確認されたから、平行線をたどり、物別れに終わったのではないでしょうか。なにをいまさらという感じです。日本政府は今回の作業部会で進展がなければ、「さらなる制裁」を口にしていました。であれば、北朝鮮からの回答はまさに「ゼロ回答」でしたので、当然追加制裁があってしかるべきだと思います。やるのかではなく、やれるのか、注視したいと思います。

ホントどうしちゃったんだ、ピョンせんせい。これまで、北寄りの発言ばかりが目立っていた人なのに。
 
今回の日記に関しては同意する事が多く、筋が通った正論と言うべき。特に、1日目の拉致問題に関する協議が決裂した際に「翌日の国交正常化交渉を拒否する」決断が出来なかったのか。とにかく外交上の得点を稼ぎたい、という下心を見抜かれてしまっている。これは2日目で「それじゃあ1日目の続きをしましょう」と言ったところで、取り返しのつくものではない。ここでも、安倍総理の決断力の欠如が目立つ。たぶん、追加制裁に踏み切る度胸も無いだろう。というか、制裁発動を行ったのは、小泉政権の時だったが。
 
【正論】秦郁彦 米下院の慰安婦決議阻止の妙案

さすがに自民党中山泰秀議員らが、河野談話の修正に向け動きだしたが、3月5日の参議院での質疑で、首相があらためて「河野談話は基本的に継承していく」と表明したため腰砕け気味になってしまった。では4月末の安倍訪米をにらんで直前の本会議可決をめざしているとされる状況に即効の対応策はあるのか、数案を検討してみよう。
 
(1)決議が可決されても法的効果はないので静観する(2)謝罪も償いもすんでいるとくり返し説得する外務省方式の継続(3)河野談話の修正(4)朝鮮戦争ベトナム戦争でも米軍や韓国軍が類似の慰安所制度を利用していた事実を指摘し、「同罪」だったことを自覚してもらう−の4案である。

この、いわゆる“従軍”慰安婦問題についても「安倍総理は“闘い”を放棄しているのではないか」と疑問の声を挙げざるを得ない。問題は「既に謝罪も償いも済んでいる」と言う事でも「慰安婦について再調査を行なう」事でも無い。はっきりと河野談話を否定し「慰安婦とはつまりは売春婦であった」と言い切る事だった。
 
これを、またマンセーさん達が「軍の直接的関与だけは否定した!これはわずかながらも前進だ」「またちゃんと調査を重ねれば韓国人がいかにデタラメを言っているかハッキリするんだ!」と庇っちゃうからダメ。どうしようもなくダメ。小泉前総理のバンドン謝罪の時から何も変わっていない。
 
トルコ猛反発 米のアルメニア人虐殺非難決議案 「穏健な日本」と対極

【ワシントン=古森義久】米国議会の下院に90年前のアルメニア人虐殺でいまのトルコを非難する非拘束の決議案が出され、採択される見通しも生まれてきた。現在のトルコ政府は同決議案に猛烈に反対し、もし可決の場合にはトルコ国内の米軍による基地使用をも制限すると言明し、両国関係の危機までが語られ始めた。米議会民主党が日本の慰安婦問題糾弾の決議案を審議する状況と酷似しているが、トルコの対応は日本のそれとはまったく異なっている。

これこそが、国家のあるべき態度である。これこそが、“闘う”という事である。「一度政府が出した談話を覆す事は難しい。過激な事を言い過ぎると国際社会から反発されるから、安倍さんの態度は理解出来る」などと言うものは、真の意味で安倍支持者ではないと思う。