ロッキーとガッツ

(id:kikori2660:20070430#1177942789)の続きで、「ロッキー・ザ・ファイナル」の話。ネタバレなのでまた伏せる事にする。
 
やっぱり、ロッキーとそのJr.の描写が色々と不自然だ。試合当日、リングに上がったロッキーの後ろにはセコンドとしてロバートが立っていた。それに気付いたロッキーが「おお、息子よ、来てくれたのか」と喜ぶシーンがある。
 
だがちょっと待て!息子はお前の試合の為に会社を辞め、特訓に付き合っていたじゃねーかよ!?なのに、その息子がセコンドとしてそこに居る事に驚くのはおかしくないか?やっぱりあの特訓シーンは、大幅に削られていたとしか思えない。でないと、その矛盾の説明が付かないのだ。
 
つまりそこには、再びロッキーとJr.のケンカがあり、劇高したJr.はロッキーの元を一度は去っていたのだ。ケンカの元ネタは、マリーとステップスの二人がレストランを乗っ取ろうとした事にある。会社を辞め、レストラン“エイドリアンズ”を継ぐつもりだったのに、いつの間やら後妻候補が会計に収まり、その連れ子が大きな顔押して厨房にいやがる。これはムカつくだろー!そんな隠されたドラマがあったに違いない。で、尺の都合上、ばっさりとその確執の描写は削らねばならなかった。というわけで、ステップスが“エイドリアンズ”で働いているシーンも、必然的に無くなってしまったのだね。は〜〜〜納得!(俺だけ)
 
それはさておき(おくのか)、最終ラウンドまで持ちこたえた親父に対して、必死で「もう十分だ、父さんを笑うヤツなんてもういない、安全策を取れ!」と言うシーンも、違和感有りまくりなんだよ。そこまで言うんなら、コーナーの外でタオルを握り締めて、それを投げるか投げまいか苦悩する姿を描かないのはおかしいじゃないか。映画における、身内の使い道なんてまさにそこしか無いだろうに。
 
「で、そのツッコミをする事でお前は何を言いたいんだ?」だって?
 
つまりは、この「ロッキー・ザ・ファイナル」はシルベスター・スタローンの徹底した「俺節」って事。息子が仕事をあっさり辞めようと、新しい家族(予定)と確執があろうと「ロッキーのカッコ良さ」を伝えるシーンの邪魔になるなら、躊躇無くカット。タオルを握り締める息子の主観も必要無し。そこに“今の軟弱な若者には負けないぜ!”というジジイの妄執すら感じられる。……この感じ。昔、日本でも似たような映画を作っちゃった人がいる。
 

カンバック [VHS]

カンバック [VHS]

もちろん我らが、ガッツ石松である。ロッキーのような架空の世界のチャンプじゃなくて本物なんである。たぶん、こんな映画は誰も見ないであろうから(これでガッツは借金3億を背負うハメになった)、ストーリーを全部紹介しちゃうんである。はは。
 
あらすじ - カンバック(1990)

ボクシング界にヒーローが誕生した。石山健太郎が見事なKO勝ちで世界を制したのだ。リングサイドで観戦する元世界チャンピオン鈴木丈は「退屈だから戦うんです」と言い放つ石山に反感を覚える。丈は今や引退して「鳥丈」という焼鳥屋をやっていた。ある日、13年降りに会ったボクサー時代の友人・レジナルドから兄の陸がグアムにいることを知らされた丈は、長い間姿を消している陸にどうしても会いたいという年老いた母・絹代と妹・ルミとその夫・圭と共にグアムに飛んだ。陸と兄弟の縁を切り、それによって妻子とも別れるハメになった丈は、内心不安だったが絹代のためにグアムに家を買おうと話す陸の熱意に負け、家の代金を用立てるのだった。だが、陸には、マフィアがらみのプロモーターに莫大に借金があり、家の代金もその穴埋めに使われていた。そればかりか丈に内緒で丈の13年振りのカンバック戦まで契約していたのだった。陸はまたも行方不明、一人残された絹代は日本に戻ってきたが、旅の疲れと心労によって死んでしまう。葬儀の晩、駆けつけた陸に、「自分がカンバックすれば全て納まるのか」と問いつめる丈。だが、それは石山の前座試合という屈辱的な話だった。決心がつかない丈は、別れた妻、節子に再会し、そこで父親がいなかったためにグレてしまった息子・男に親父としての何かを残してやりたいと思い、カンバックを決意する。かつての名トレーナー・三雲にセコンドを頼み、過酷なトレーニングと苦しい減量の日々が始まった。そして、もう一度ゼロから始めようとする丈のために、カンバックのゴングは鳴った。さすがに丈にとっては、かなり不利な展開となり、死闘となった。打たれまくる丈だったが、最終ラウンドの時、遂に丈の一発が相手を倒した。丈は見事にこのカンバックを制したのだ。しかしその瞬間、丈はリング上に倒れ永遠の眠りにつくのだった。

どうですこれ。ダメ兄貴がポーリーだとしたら、年老いた母はエイドリアン、別れた妻はマリー、不良息子はロバート。トレーナーを「寄生虫」と馬鹿にする新人類ボクサー石山はディクソン。ああっ、ガッツさん!スタローンがあなたの映画パクってますよ!?訴えちゃえ!!うそうそ、なんちゃって。
 
とにかく世の東西を問わず、親父は生命を賭してでも、息子に何かを残さなきゃいけないのだ。息子はヘタレでもいい。というか、ヘタレな方が好ましい。「俺節」というか「親父節」には、だからこそドラマが生まれるわけで。これまで散々なんだかんだ言ってきましたが「ロッキー・ザ・ファイナル」は良いですよ。マジで。「あースタローン、自分で酔っちゃってるよ」と思わなくもないけど、これでイイのだ。
 
ロッキーからしてみれば、現・世界チャンピオンも“何か”を伝えるべき息子なわけですよ。2-1のスプリットデシジョンという大接戦にも関わらず、勝者を伝えるコールにも興味を持たず、控え室へ悠然と去ろうとする「真のチャンプ」の奥ゆかしさとカッコ良さったらないでしょ。親父サイコー。
 

親父 1 (ビッグコミックス)

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そう言えばこのオヤジもダメ息子達を救って、最期は○ぬ。