今日読み終わった本

大盗禅師 (文春文庫)

大盗禅師 (文春文庫)

唯一読んでなかった司馬遼太郎の小説。
 
う〜む。
 
これ、司馬小説の中でもかなりの傑作の部類に入るんじゃあるまいか?ストーリーは「妖怪 (講談社文庫)」と似て、主人公は兵法の達人であるけれども、常に大人物や事件に振り回されていくという構成。そこが、主人公が常に強烈な個性を放っている、司馬の他のヒット作品とは違い、あまり受けていない理由なんだろう。主人公の行動に対し、由比正雪鄭成功ら、歴史上の人物が様々な形で絡んでくるのだが、ただそれだけ。大事件の顛末には関わらず流されていくだけ。しかし、押井守もかくや、というぐらいの犬猫理論が展開されていて、主人公の迷走っぷりが逆に新鮮だ。そして物語のラストで主人公は、生まれてはじめての自分自身の意志で、ほんのちっぽけな“反乱”を起こそうとする。しかしその結末には一切触れられないのだ。だが、そこがいい。
 
10年前に読んでいたら、俺もただの駄作で片付けてただろうな。