拉致関連ニュース

◆金英男さん会見、韓国メディア「拉致否定」に冷ややか

韓国のメディアは29日、韓国人拉致被害者、金英男さんの記者会見を大々的に報じた。だが、その内容については「北朝鮮の従来の立場を繰り返しただけ」(ニュース専門テレビYTN)とし、「拉致問題解決への突破口を開くのは簡単でない」(同)との厳しい見通しを伝えている。
 
韓国側にとって最大の関心事は、金さんが北朝鮮に拉致された事実を率直に認めるかどうかだった。この点で「拉致でも自ら北朝鮮に渡ったのでもない」として“偶然説”を持ち出したことに、聯合ニュースは「額面通りには受け取れない」と論評。「北朝鮮側が記者会見を開くと言った時から、拉致を否定するとは予想していたが、南北間にはまだ越えられない壁があることを痛感した」と指摘した。
 
韓国統一省当局者は29日、本紙に対し、金さん親子の再会を「拉致問題で初の成果」と評価した上で、「今後、一人でも多くの家族が再会できるよう努力する」と述べた。
 
だが、聯合ニュースは、北朝鮮に「拉致被害者の存在を認め、名簿を渡し、帰還させなければならない」と求める一方、韓国政府に対しても、「金氏が拉致を否定したからと言って、今までより後退した態度を見せてはならない」と強く帰還を迫るよう注文をつけた。

◆韓国メディア、金さん証言を疑問視 日本批判も
(http://www.asahi.com/national/update/0701/TKY200606300661.html)

韓国人拉致被害者、金英男(キム・ヨンナム)さんと母姉の再会をめぐる韓国世論や政府の受け止め方は「28年ぶりの再会実現」を高く評価しつつ、英男さん証言を疑問とし、北朝鮮への不信感と期待が交錯したものだった。一方で、一時的な再会より拉致問題の一括解決を求める日本側の反発が同時に伝わったこともあり「拉致で(北朝鮮を)圧迫しようとする日本は態度を変えねばならない」(ソウル新聞)と矛先を日本批判に向ける論調も目立った。
 
「英男氏、『拉致ではない』とウソつく」。最大手紙の朝鮮日報は30日、英男氏の証言に信頼性がないと断じた。同紙は前日、1面トップで親子の再会を破格の大きさの写真とともに伝えていた。政府の対北融和政策が行き過ぎだとの論陣を張る保守系大手紙は軒並み、再会場面を大きく情緒的に報じ、拉致の状況や横田めぐみさんに関する証言については目立たない扱いで足並みをそろえた。
 
ネット新聞のオーマイニュースは「注目されるのは、北が金氏を韓国メディアの前に出した自信だ」とし「証言を否定する日本との葛藤(かっとう)は今後も続く」と分析した。
 
離散家族再会は00年の南北首脳会談を契機に本格化して14回を数えるが、韓国政府が認定する500人近い拉致被害者や捕虜の数人ずつが実は毎回ひそかに参加。北朝鮮を刺激しないよう、韓国政府もメディアもほとんど伝えてこなかった。今年3月の再会では、拉致を意味する「拉北(ナップク)」という言葉を韓国のテレビが現場中継で使っただけで、北朝鮮当局が通信を中断する騒ぎもあった。
 
それが今回は、拉致被害者と公認され日韓の注目を集める人物を北朝鮮自ら「母親と再会させる」と事前に宣言し、記者会見も開かせた。韓国メディアにも自由な報道を許した。韓国政府内には「南北関係の中で北が拉致を事実上認めた初の例」との見方がある。
 
また、英男さんが「自ら北に渡った」と言わず「偶然に救助された」としたことも「過去の北の押しつけの主張とは違う姿勢の変化が感じられる」(政府当局者)。背後に北朝鮮の政治的意図があることが否定できないにしても、韓国政府は「対北政策の一貫した努力の成果」と自負する。
 
韓国政府当局者は30日、英男さんの再会を総括して「証言の真偽はあえて詰めない。息長く拉致・離散家族問題の前進を図る。めぐみさん問題は日本の問題。我々が一緒にやることはない」と述べた。

◆「めぐみさん、3歳で事故」 金さんの姉が明かす
(http://www.asahi.com/special/abductees/TKY200606300659.html)

横田めぐみさんの夫だったとされる韓国人拉致被害者、金英男(キム・ヨンナム)さん(44)との28年ぶりの対面を果たした母親の崔桂月(チェ・ゲウォル)さん(79)と姉の金英子(キム・ヨンジャ)さん(47)は30日、北朝鮮金剛山での2泊3日の再会日程を終え、韓国側に戻った。崔さんは到着後、記者団に「会えて良かった」と語り、喜びをかみしめた。
 
韓国代表取材団によると、英男さんが「漂流中に北朝鮮の船に救助された」と拉致を否定したことについて、英子さんは「率直に言ってそうかも知れないと思った。聞いたとおりに信じたい」と述べ、理解を示した。
 
英子さんは、英男さんから8月に平壌に来るよう招待されたことについて前向きに検討する考えを示した。韓国政府高官も「人道問題であり、政府が反対する理由はない」と述べ、正式な招請があれば許可する考えを示した。
 
めぐみさんと英男さんの娘キム・ヘギョンさん(本名ウンギョン=18)の写真を横田滋さん夫妻に提供する用意があるかと問われ、英子さんは「そういう考えはない。日本(の家族)も(北朝鮮に)行ければ機会があるだろう」と述べ、夫妻に暗に訪朝を促した。
 
英男さんはめぐみさんについて「3歳の時に交通事故にあい、結婚前も頭痛がひどかった」と述べたという。平壌の自宅には、めぐみさんとの結婚写真とヘギョンさんの1歳のお祝いの写真があると述べたという。
 
英男さん親子はこの日午前、他の離散家族とともに最後の対面に臨み、バスが発車するまで泣いて手を握りあい、別れを惜しんだ。
 
    ◇
 
北朝鮮朝鮮中央通信は30日夜、「我が方の金英男さんと妻、娘、息子が、南朝鮮(韓国)から来た母親と姉と会い、肉親の厚い情をかわした」として金さん親子の再会を初めて伝えた。

◆英男さんの姉が“変心”「無理もないが」日本側複雑
(http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe4200/news/20060701i201.htm)

横田めぐみさんの夫とされる韓国人拉致被害者、金英男(キム・ヨンナム)さん(44)の姉、金英子(キム・ヨンジャ)さん(48)が30日、北朝鮮金剛山で韓国同行記者団に対し、29日の会見で英男さんが拉致を否定したことについて、「(北朝鮮に救助された)可能性がある。弟を信じる」などと、拉致被害の主張を改める発言をした。
 
英子さんは韓国に戻った30日夕、読売新聞の取材に「横田夫妻に話したいことがたくさんある」と語ったが、訪朝後の英子さんら家族の姿勢や発言の変化が、今後、日韓の拉致被害者家族の連携に影響を与える可能性もある。
 
英子さんと母親の崔桂月(チェ・ケウォル)さん(78)は30日午前も、英男さんと面会した。今回の再会事業では3回目となる面会は、冒頭から約10分で韓国同行記者団が退席を求められ、その後は家族だけで行われた。
 
面会を終えた英子さんは記者団に対し、「弟から渡された」として、娘のキム・ヘギョン(ウンギョン)さんら家族の写真約10枚を公開。幼少時のヘギョンさんを抱いた英男さんの写真もあったが、めぐみさんの姿が写ったものは1枚もなかった。
 
英子さんは、めぐみさんの写真も見せるよう英男さんに求めたが、「結婚式と娘が1歳を迎える誕生日の写真はあるが、持参しなかった」と答えたという。
 
記者団から「写真を横田夫妻に渡すのか」と問われると、英子さんは「その気はない。日本も(北朝鮮との間を)行き来できれば、そうなる(写真を渡される)のではないか」と横田夫妻に訪朝を促すような発言も。29日の会見で英男さんが拉致を否定したことには、「(北朝鮮に救助された)可能性があると思った」と理解を示した。英子さんらは、韓国の拉致被害者家族で作る「拉北者家族の会」の一員だが、「弟から聞いた通りに信じたい」と言い切り、突然、拉致被害の主張を引っ込めた。
 
北朝鮮を出発後、英子さんらは、軍事境界線を越えた韓国北東部の高城(コソン)で、今回初めて日本メディアの取材に応じた。だが、訪朝前に比べ表情は硬く、感情を押し殺して「再会できたのはうれしかった」と述べるにとどまった。その後、読売新聞の取材に答えた英子さんは、「横田夫妻に会えれば、話したいことはたくさんある」と話したが、具体的な内容を尋ねると、言葉を濁した。
 
こうした英子さんらの変化について、めぐみさんの父親、横田滋さん(73)は「肉親が北朝鮮に残る限り、不本意なことも言わなければならないのは無理もない」と受け止めていた。
 
一方、英男さんが面会で、英子さんらに「(めぐみさんが)3歳で交通事故に遭ったと言っていた」と話したことに対し、母親の早紀江さん(70)は「交通事故は一度もない。車の接触すらない」と否定し、めぐみさんの「死」を巡る不自然な説明がまた一つ明らかになった。

日本ですら、拉致被害者救出運動が軌道に乗ったのは家族会・救う会の発足から数年経ってからだ。その間に、政治家や関係者の裏切りが何度もあった。冷たい言い方だけど、人のアドバイスは意外と役に立たない。実際痛い目を見て、自分なりの体験を積まないと分からない事が多いだろうと思う。だから今回の事で日韓連携への希望を簡単に捨て去る必要は無い。もちろん今のままの小泉政権盧武鉉政権ではダメで次の政権に期待するしかないんだけど。
 
金英男さんの記者会見を見ている限りだと、このお姉さんより、お母さんの方がよほど真実を見つめているような気がする*1。横で息子の顔を眺めている顔は「あんた、一体何を言ってるんだい?」というような唖然とした表情だった。
 
この数日間TVの報道番組では、横田さん夫妻が出ずっぱりだったが、同じ立場の寺越武志さんのお母さんも積極的に姿を見せていた。しかしこの寺越さんのお母さんにしても、息子さんの拉致認定を取り下げようとしたり、家族会から距離を取ろうしていた事もあったのだ。それくらい微妙な立場だという事を忘れてはならないと思う。

*1:お姉さんは“工作”されている可能性すらあると思う