救う会全国協議会ニュース

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拉致議連人権擁護法案で緊急声明
 
自民党人権問題調査会と法務部会は、明日3月18日、人権擁護法案について三回目の合同会議を開き、法案を国会に上程する動きをみせている。これに対し、党内では多数派工作が行われているとのことであるが、予断を許さない状況となっている。
 
報道によれば、古賀誠自民党人権問題等調査会長は、所属する堀内派の会合で、人権擁護委員日本国籍を持つ人に限るなど国籍条項を入れる手直しを行うことを検討する考えを示している。
 
この法案は、部落解放同盟が主導し、朝鮮総連や多数の人権団体が運動に加わってきたと言われるが、朝鮮総連の主張のみを取り下げることを切り札にして、他の人権団体の主張を通そうとしている動きのようにも見える。また、古賀会長は、「法案の手直しの手順については、自民党の党内調整で行うのか、国会審議の中で修正協議をするのか、状況に応じて柔軟に対応する」との考えを示し、あくまで問題のある法案を通そうとしているようにも見える。
 
この法案のままでは、人権擁護委員から一般国民は排除され、人権問題に関わったことのある活動家・有識者なるもの約2万人が全国から選ばれかねない。仮に国籍条項が入ったとしても、偏向した価値観を持つ人々のみが選ばれれば、朝鮮総連の主張が彼らによって代行される可能性もある。また、主観的な判断で「人権を侵害された」と訴えれば、礼状なしの家宅捜査が行われて尋問され、「人権侵害があった」として罰金が課せられることにもなる。さらに、日本が密告社会化し自由な言論ができなくなる懸念も強い。拉致被害者の人権回復を求める家族会、救う会の活動であっても「人権」の名の下に大きな制約が課せられることも予想される。
 
もし、明日3月18日に、法案賛成派が多数派工作を背景に「審議打ち切り」で「強行採決」を諮るようなことになれば、容易ならざる事態となる。
 
このような状況下で、超党派で組織された拉致議連が、「本法案が拉致被害者支援活動、さらには自由主義・民主主義の根幹である『自由な言論』までも侵害する可能性があると強い懸念を感じている」と、4点について「この懸念が完全に払拭されるまで、本法案を国会に提出すべきではない」との緊急声明を発表した。以下はその全文である。
 
拉致議連人権擁護法案で緊急声明
 
人権擁護法案に対する緊急声明
 
三年前に提出され、「メディア規制法」と批判を浴び、廃案となった人権擁護法案が国会に再び提出されようとしている。国民の生命と財産を守ることが国および政治家の責務との信念を持ち、北朝鮮による国家犯罪である拉致問題の解決のために被害者および家族の視点で活動してきた我々は、本法案が拉致被害者支援活動、さらには自由主義・民主主義の根幹である「自由な言論」までも侵害する可能性があると強い懸念を感じている。我々は、出生や国籍などを理由にした人権侵害は許されないと考えていることは言うまでもなく、本法案が目指している本来の趣旨である人権侵害に対し、救済措置を施すことに何ら異論はない。しかし、本法案は下記のような重要な問題を含んでいる。
 
この懸念が完全に払拭されるまで、本法案を国会に提出すべきではない。
 
まず第一に、本法案では、「人権侵害」の定義があまりに曖昧である。第二条で「人権侵害とは不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」と規定しているが、これでは「人権侵害とは人権侵害である」と言っているのと同じではないか。さらに「助長」や「誘発」までも救済措置の対象とされており、拡大解釈の余地があまりにも大きい。新設される人権委員会が「人権侵害」と認定する段階で、恣意的な解釈が可能であり、健全な言論活動は著しく侵害され、「言葉狩り」が横行する危険がある。例えば、北朝鮮拉致問題への対応を批判したり、経済制裁を求めることまでも、在日韓国・朝鮮人への人権侵害を助長したと解釈されてしまう危険性がある。
 
第二に、本法案は人権侵害に関する情報収集や被害救済・予防活動を行う人権擁護委員を全国で2万人委嘱されることを定めているが、その選考があまりに不透明である。市町村長が「弁護士会その他人権の擁護を目的とし、または支持する団体の構成員」のうちから推薦することになっているが、国籍条項はない。破壊活動防止法に基づき、いまだに公安調査庁の調査指定団体となっている朝鮮総連の関係者が委員になる可能性は否定できない。また、北朝鮮などと連動して活動している日本の市民団体や特定の政党の影響を排除するための規定も見あたらない。
 
第三に、人権委員会は人権侵害の特別救済手続きとして、出頭要請、押収、立ち入り検査など、いわゆる3条委員会としての強制力を持つ。法務省は「令状主義に反するものではない」と説明しているが、国民に畏怖、抑圧し、自由な言論を妨げることにつながる危惧は払拭できない。
 
第四に、現行法上の人権擁護委員は、政治活動が禁止されているが、本法案上は、積極的な政治活動のみが禁止されているに過ぎない。
 
まずは、ADRの充実や現行人権擁護委員の権能強化など司法制度改革を推進し、本当の権利侵害を受けた弱者が迅速かつ簡便な救済策を受けられる制度を充実していくべきである。
 
以上われわれ「拉致議連」として、「人権擁護法案」は慎重に取り扱うべきであることを声明する。「表現の自由」は民主主義の根幹であり、すべての国民が有する権利である。我々はこの民主主義を守るために毅然とした姿勢を貫くことをここに誓いたい。
 
平成17年3月17日
 
拉致議連」(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)会長 平沼赳夫