“核議論”の議論について

結構色んな人が勘違いしているようなんで一応言っとくと。この問題について語られる時、西村眞悟が当たり前のように「核武装論者」という前提になっている事が多いわけなんだけど。でも、実際は、「核についての議論はすべきだ」と常々は言ってはいても「即核開発、即実戦配備!」とまでは言った事が無いと思うんだよね。小渕内閣の時に防衛政務次官を辞任するキッカケとなった◆『大川興業総裁突撃体験報告「政治の現場すっとこどっこい!」』というインタビュー記事においても、下品な言葉を羅列してはいても、“核の抑止力”を強調しても、直接的に核武装を推し進める発言をしているわけではない。実は世間一般の印象とは違って、酒の席でも意外に慎重な政治家だと考えてます(笑)。「西村は軍事の事が何も分っていない!デタラメな知識を披露するから自衛隊員は迷惑している!」と批判する小泉系軍オタがよくいるんだけど、何がどう間違っているのか聞いてみても、具体的に指摘してきた事が一度も無い。たぶん、ニュースの一部だけを耳に挟んで勝手な思い込みをしてるだけなんだろうけど。
 
◆月曜評論 眞悟の憂国 平成14年11月号
(http://www.n-shingo.com/getuyou/1411.html)

米ソ冷戦時代は、核戦略は米ソの問題で日本の問題ではないと他人事を決め込んだ。我が国では、昨日まで「非核四原則」が国是。つまり、「核は、造らず、持たず、持ち込ませず、議論せず」だった。しかし、北朝鮮の核はアメリカの問題で、我が国は関係無いのか。国内では、カネ、カネ、キンコという片言で日本人は脅迫されカネを盗られている。国家単位においても、核で脅迫されて共同宣言どおりにカネを盗られるのか。
 
そこで、同じ事態に遭遇した西ドイツを想起したい。一九七〇年代にソ連は中距離核弾頭ミサイルSS20とバックファイヤー爆撃機NATOに向けて実践配備した。西ドイツのシュミット首相は、この破綻した軍事バランスを回復する決断をしてアメリカから中距離核弾頭ミサイルパーシングⅡと地上発射用巡航ミサイルを導入して、核のバランスを回復した(一九七九年)。そして、同時に開始した軍縮交渉により八年後にSS20のヨーロッパからの撤去を勝ち取ったのだ(一九八七年)。

西ドイツがソ連のSS20などのミサイルに対抗して、それに対抗すべくアメリカから兵器を導入したこの事例はつとに知られているが(ところで、“つと”って何だろう?)、ずっと昔からこの主張は何度も繰り返しているし、「非核三原則」に“核について議論すら許さない”風潮を批判する「非核四原則」という揶揄の言葉を使い始めたのはおそらく西村が最初じゃないのかな。たぶん。
 
ま、それを前提として貰うとして、核議論を巡って目立つようになってきた奇妙な論理に触れたい。社民党のような「議論すらとんでもない」という戯言は論外としても、割と保守的な立場の人でも初めから否定ありきで「議論など馬鹿馬鹿しい」という断言をする為としか思えない論理が罷り通ってしまっているので、それにツッコミを入れるスタイルという事で。

  • 核武装をする為には、10兆円を超える予算と30年もの年月が掛かってしまい、現実的ではない!
  • 核武装が国土防衛に有益ならば、30年後の日本の為に始めてみれば?国が滅んだ後に予算の心配をしてもしょうがないでしょ。そもそも、その数字の根拠は何だろう。防衛庁でも自衛隊でも無い、素人が推定したテキトーな概算を前提にしろと?軍事予算を割り出すには、国家戦略とその目的を考慮した統括的な計算が必要だと思うのだけど、そうした研究や議論もなしに「現実的ではない」と言う募る事こそ現実的ではないだろう。

 

  • 軍縮を訴えてきた日本が北朝鮮と同レベルに堕ちるべきではない!唯一の被爆国である日本がそんな事をしては説得力に欠けるし、核拡散に繋がってしまう!
  • 説得“力”を持つのは軍事力という具体的な力を持つ国であって、持たない国ではない。日本の説得によって、これまで核放棄をした国があったか?口でどうにか出来るなら軍隊なんていらねーよ。

 

  • 貿易立国の日本は核武装をした途端に、核兵器不拡散条約(NPT)から脱退しなければならなくなり、同時に世界各国から経済制裁を受ければ、たちまち立ち行かなくなる!
  • 条約を読む限り、その第十条には脱退条件として「この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合」とあるから、北朝鮮のミサイル発射や核実験は充分それに当てはまる事態である。それに経済制裁の前に国家が滅んでしまったらお話にならないでしょ?というか、制裁を受けないように外交努力するのが政治であって、何故一方的に制裁を受ける事が前提になっているのだろう。

 

  • 核武装などと言う前に、憲法を改正して国軍を保有する事こそが優先されるべきだ!
  • いや、おっしゃる事はもっともなんですけど、核武装を検討してしまうと国軍創設も不可能になるんですか?それが議論してはならない根拠にはならないですよね?

 

  • 中国のような広い国土を持ち、北朝鮮のような経済制裁に耐えられる国で無ければ核兵器は意味を為さない。特に日本のような小さい国においては!
  • 兵器は運用の仕方次第であって、日本に存在すると突然その有効性が失われる、なんて事は無いだろう。だから戦略も何も研究すらしておらず、議論すら存在しない国家の国民がどうして簡単に「意味が無い」なんて言えるんだ?

 

  • アメリカは決して日本の核保有を許さないぞ!
  • そんな事も無いと思うけど。現に「核のパワーバランス」を説いて、日本の核保有を薦める発言はアメリカの政治評論家から出ているようだし、在日米軍が「日本のビンの蓋」である、と言っていた時代は過去の話。日本に、中国に対し極東防衛に当たらせようとする勢力は共和党民主党に選挙で破れようとも、潜在的にあり続けると思う。

 
個人的なまとめとして、核についてはとりあえず「作らず」程度の事を守っていけば良いんじゃなかろうか。まーそんな感じですハイ。