人権擁護法案と油濁法 〜この二つの法案に賛成する人々に共通した病理 その6

まずはこの法案の文面が問題になっている。
人権擁護法(案)
(http://www.moj.go.jp/HOUAN/JINKENYOUGO/refer02.html)
いやもう、最近いわゆる“反対派”と“反・反対派”の拠点サイトやFAQサイトが増えてきて追いきれない状態ですね。
 
でも、反・反対派の「人権擁護法案は反対派が煽るほど危険なものではない!」という主張がよくまとまったサイトを紹介してみると、id:plummetさんの
人権擁護法案:まとめエントリー
(id:plummet:20050501#p4)
◆反対派の「反対理由」へのカウンター一覧(仮)
(id:plummet:20050407#p2)
辺りが一番分かり易いかも。でも全文を引用すると長くなりそうなんで抜粋して掲載します。

・令状無しに家宅捜索、資料押収、出頭要請なんてひどい!
→「家宅捜索」と「押収」は司法の用語(刑事訴訟法 押収及び捜索」)であって、人権擁護法案が属する行政の権限ではありません。法案にあるのは、いわゆる「立ち入り検査」と「資料の提出要求」です。裁判所が令状によって発する捜索や押収と違い、行政である人権擁護法案のそれらは「正当な理由」があるなら拒絶可能です(罰則を覚悟すれば正当な理由なしでの拒絶も可能だと読むことも出来ますが、実際の運用上はちょっと分からない)。
 
・人権委員に逮捕される!
→逮捕というのも司法の権限なので、行政であるこの法案ではあり得ません。もちろん実際に差別行為を行った結果、侮辱罪などに問われ逮捕というのはあり得ますが、それはすでにこの法案の範疇ではありません。
 
人権擁護委員に国籍条項がないなんて!
→人権委員および委員長は、法案附則第四条において、
(略)
と示されるように、特別職国家公務員に該当すると解釈されます。つまり「当然の法理」が適用されると解釈するのが妥当です。よって外国籍者が人権委員になることはあまり考えられません。また、もし外国籍者が人権委員になりそうな状況になった場合には、上記を根拠として反論し阻止しようとすることが可能でしょう。
 
・一度法案が成立したらもう手遅れだ!
→法律は改正できます。もちろん廃止もできます。ソース:人権擁護法案 附則第二条「人権擁護委員法(昭和二十四年法律第百三十九号)は、廃止する。」
 
・特定の利権団体に悪用されるのが落ちだ!
→「予見される可能性」だけをもって反対を唱えるのは説得力がありません。「陰謀論」と両断されないためには、具体的な証拠なり根拠を示すべきではないでしょうか。もちろんそれは、過去に起きた事例紹介ではなく、「人権擁護法案を悪用しようとしている」ことを合理的に予測可能なものである必要があります。

最後に「特定の利権集団……」を持ってきたのは、今現在それがもっとも強い声になっているようなので。まぁこんなの運用の問題であって、条文のレベルで言うこっちゃないと思うんだけどな。

これも何度も書いたことだが、法律なんだから「使い方次第」なわけだ。「使われる」時のことばっかり考えて、なぜ「自分が使う」ことを考えないのかというのは不思議なこと。

この方のFAQを一見すると「なあんだ。人権擁護法案ってそんなに心配するほど危険な法律でもないじゃん!」と思ってしまうかもしれない。
 
それが罠なんですね。これこそが油濁法を絶賛していた小泉信者と同レベルだという事。結局のところ油濁法もその「使い方」がうまくいかなかった。この人権擁護法案もたしかにid:plummetさんの言う通り、人権委員会には大して権限もなく、悪用出来るものでは無いのかもしれない。でもそれはあくまで上っ面をなぞった理論の言葉遊びに過ぎません。油濁法の文面を眺めて「これで北朝鮮のほとんどの船舶は日本にやって来れなくなる。これぞ形を変えた経済制裁だ!」と喜んでいた人は、その「使い方」に対して、ちゃんと小泉政権に文句を言っているんでしょうか。私は残念ながら、とんと見掛けた事がありません。
 
そのid:plummetさんに対して、コメント欄にはこういう書き込みがされています。

・特定の利権団体に悪用されるのが落ちだ!
この部分は個人的な見解ですけども、「予見される可能性」を語るのは有意義なことだと思いますよ。過去に起きた事例紹介も重要だと思います。どんな人たちのための法案で、どんな人たちが運用し、どんな効果が期待できるのか。語るべきはそこであって、そのためには「予見される可能性」を語るのも、過去に起きた事例紹介も外せないと思います。その結果、反対と叫んでるんだと思います。

どうもこれだけに対しては、回答の歯切れが異様に悪い。
このエントリー(id:kikori2660:20050715#p1)で述べた通り、在日・同和団体による利権闘争は同特法消滅以後も続き、現在も国連を利用した政治工作を行っているではないか。過去の事例に学ばずして一体何に学べというのか。これを無視し“陰謀論”と片付ける行為が「理論馬鹿」と呼ばれる所以なのではないでしょうか。どうにも不可解なのは、この「反対派の陰謀論」を主張する論陣の中で、この人権擁護法案の議論とディエン国連人権委特別報告官の工作活動を結び付けて語る人をまだ見掛けない事だ。単に興味が無いだけなんですか?それとも自分が今まで繰り広げてきた言説に都合が悪いからスルー?*1
 
で、散々引っ張ってきてなんですが、次のエントリーに行くまで先に結論をぶっちゃけて話します。
 
この人権擁護法案は在日・同和利権団体にとって、どれだけ骨抜きになろうが、文面で危険性が無くなろうが、とにかく成立すれば良い代物なのです。*2

*1:単に私が見落としているだけかもしれませんので、ちゃんとこの二つについて論じている方を見掛けましたらご報告願います

*2:あと、民主党案にも触れとかないとね。