いまだ明かされぬ真実 その1

◆「目撃、生存情報は15人」 元工作員衆院で初陳述 」
(http://www.sankei.co.jp/news/050728/sei038.htm)

安氏が目撃した日本人の1人で既に帰国した蓮池薫さん(47)にも触れ「彼は多くの人びとの情報を持っているはずで、北朝鮮を怖がらず日本国民のために証言してほしい」と呼び掛けた。

◆「安氏の国会証言に、蓮池さん反論 『会ったことない』」
(http://www.asahi.com/national/update/0729/TKY200507290317.html)

北朝鮮工作員安明進(アン・ミョンジン)氏が28日の衆院拉致問題特別委員会で「(工作員養成機関の)金正日政治軍事大学蓮池薫さん(47)=新潟県柏崎市=らを見た」と証言したことについて、蓮池さんは29日、市を通じ「多少の思い違いがあるようだ。私は金正日政治軍事大学にいたことはなく、安氏とお会いしたことがない」とする談話を文書で発表した。
安氏は同委員会で「蓮池さんは多くの人々の情報を持っている。北朝鮮を怖がらず、日本国民のため証言してほしい」とも語った。これに対し蓮池さんは「知っている拉致被害者の情報はすべて国やご家族に話し、情報の活用はお任せしている。公開は差し控えたい」と記している。

この二つのニュースを聞き、改めて「ああ、めぐみさん達のような未帰還者だけでなく、帰国する事が出来た蓮池さんら5人の事件もまだ終結していないのだな」と思わざるを得なかった。ご存知の通り、この安明進氏の証言によって、北における横田めぐみさんを始めとする日本人拉致被害者の存在が知られるようになり、奪還運動は急速に盛り上がった。元・北朝鮮工作員とはいえ、これらの勇気ある証言には素直に感謝すべきではないかと思う。しかし一癖も二癖もありそうなこの人物、我々日本人には窺い知る事の出来ない独自の論理に従って動いている感もあり、完全には信用出来ない。しかし数々の拉致事件関連書籍や漫画アクションで連載された「めぐみ〈前編〉」でも描写されている様に、金正日政治大学の講堂にてめぐみさんを見掛けたという証言も全てデタラメなのか。自分にはとてもそうとは思えない。
 
この場合、キーワードとなるのが「金正日政治大学」である。工作員を育成する北朝鮮の最高機関であり、多くの日本人拉致被害者もここで教官として働かされていたという。市川修一さんもその一人だ。蓮池薫さんの家族はめぐみさん家族とも親交があり海水浴に一緒に遊びに行く仲、しかも薫さんとめぐみさんの夫であるキム・チョルジュン氏は薫さんと同じ職場であった。これで薫さんが金正日政治大学にはいなかった、只の公的機関で日本からの本や雑誌を翻訳するだけの仕事をやっていた、というのは無理があるような気がする。既にこのような報道があるのだから。
 
◆AERA[10月28日号] 「北朝鮮/私は特殊機関にいる−拉致被害者5人、涙の帰国劇の舞台裏 北朝鮮日本人拉致事件、被害者・奥土祐木子 8」
(http://hackjaponaise.cosm.co.jp/NorthKorea/bbslogs/nkoreabbs1552.html)

<「私は特殊機関に勤めています」
帰国から一夜明けた10月16日午前。すでに死亡と北朝鮮側が発表した8人の拉致被害者の家族が、蓮池、地村さん夫妻と曽我さんに個別面会し、わが子に関する情報がないか尋ねて回った。13歳で拉致された横田めぐみさんの情報を求める横田滋さんに、蓮池さんはそう語った>
 
<薫さんは「資料室に勤めている」と話した。彼はなんらかの形で対日、あるいは対南(韓国)工作の一端を担わされていることになる。 横田さんは、その話を佐藤勝巳さんに伝えた>
 
<その佐藤さんが言う。「5人のいわばボスが彼だ。特殊機関とは朝鮮労働党所属の四つの工作機関が終結する『3号庁舎』管轄部門のこと。彼の自宅を写真で見たが、かなり広い家だ。北朝鮮の庶民とはかけ離れている。チャーター機にたくさんお土産を積んできた。中身は北朝鮮の煙草のようだ」>
 
<16日早朝、宿泊したホテルでニュースを見た薫さんは兄の透さんの部屋を訪ね「めぐみさんの報道は間違いだらけだ」と訂正を求めろと言わんばかりに詰め寄った。平壌から5人に同行したがホテルを別にされた朝鮮赤十字会所属の2人と連絡を取りたいと求め、「彼らは我々の居所を知る責務がある。さもないと彼らは処罰を受ける」と言った。北朝鮮からの「帰国者」としては過去、日本人妻の里帰りが3度行われた。在日朝鮮人北朝鮮への帰国事業で、夫とともに渡った日本人女性たちだ。妻たちの中にリーダーがいて、他の妻たちが北朝鮮当局に指示されて通り発言、行動しているか、監視する任務を負っている。工作機関の人間である可能性が極めて高い。北朝鮮国内でも日本人監視の役目をしているのだろう」(日朝関係筋) 浜本富貴恵さんの兄、雄幸さんは16日の会見で、「蓮池さんは相当に地位が高いようで、妹は朝鮮語で『先生、先生』と呼んでいた」と話した。薫さんの映像を見た元工作員で韓国に亡命した安明進氏はソウルのテレビインタビューに、「(工作員養成機関の)金正日政治軍事大学で彼を見た。彼が表に出るなら、誰でも帰国は可能だ」と答えた>
 
<佐藤氏によると、薫さんは談笑していても、話題が政治になると表情が一変するという。「(北朝鮮による)大韓航空機爆破事件(87年)を知っているか」と透さんが聞くと「そんなことはない」。北朝鮮で餓死者が300万人も出たそうじゃないか」との問いに「そんなにいるはずがない」。北朝鮮の謀略活動については「そんなの考えすぎだ」。「日本は朝鮮を占領しひどいことをしてきた」と日本批判もした。妻の奥土さんと浜本さんは黙って聞いているという。個別面会で、横田さん夫妻に「地村さんも同じ所で働いている」と口にした。「特殊機関の人間」と薫さんはなぜ横田さんだけに伝えたのか。ほかの家族とは会うのさえ嫌がっている。めぐみさんについては多数のことを語るのに、彼女以外の「死亡者」については「知らない」と取り付く島もない。その態度は5人全員に共通している。「まるでテープレコーダーを聞いているようだった」(会見で、増元るみ子さんの弟、照明さん)>
 
<朝鮮側は公式に認めたことはないが、金正日総書記の実の娘と同じ名なのである。また北朝鮮の発表では、彼女と父親は平壌の万景台区域に住んでいる。この地区は、故・金日成主席の生家が保存された「革命の聖地」だ。聖家族と重なるこれらの事実は偶然なのか。5人を迎えに日本政府のチャーター機が15日午前、平壌順安空港に到着した時、キム・ヘギョンは空港に待機していた。……日本政府に事前の連絡はなく、父には内緒で来たという>

この通り、薫さん自身が当時特殊機関で教官を勤めていた経歴が事実である事を認め、安氏は薫さんぐらいの地位にいる人が帰国出来るのなら、他の日本人も可能なはずだと確信していた。しかしながら、帰国してから三年近くになるというのに、めぐみさん以外の情報がまるで出て来ない。被害者日本人は皆、日本人村にまとめられていたはずなのに、日本政府が認定した拉致被害者日本人以外の情報が何も無い。確か当初は「周りは朝鮮語を話していたからお互いが日本人だと気が付かなかった」と話だったが本当にその証言を皆、信じているんだろうか?
 
はっきりと一つだけ言えるのは、この問題について意識を持っている人間なら「安氏にも思い違いの一つはある」「薫さんより工作員の言う事を信じるのか?」などと、馬鹿な発言が出来るはずが無いという事だ。