日本政府は日朝平壌宣言の破棄を明確にせよ

一昨日・昨日の日記に記した通り、小泉首相の三度目の訪朝の可能性は消えていない。それどころか積極的に北朝鮮との国交正常化に突き進んでいる。今、行われようとしているのは、日本人拉致指令を下した金正日に免罪符を与え、この問題を封殺する事である。むしろ国交正常化を望んでいるのは日本の方であって、北朝鮮は国家を建て直す為の経済支援さえ受けられればそれで良いのだ。
 
◆北、ミサイル凍結を破棄 日朝協議 平壌宣言を空文化
(http://www.sankei.co.jp/news/060211/morning/11iti002.htm)

四日から八日まで北京で行われた日朝政府間協議で、北朝鮮側が平成十四年の日朝平壌宣言に明記されている「ミサイル発射のモラトリアム(凍結)」を破棄する意思を日本側に伝えていたことが十日、わかった。複数の日朝外交筋が明らかにした。北朝鮮には、日本側の目を核・ミサイル問題に向けさせることで拉致事件をかすませるとともに、経済支援を引き出す狙いもあるとみられる。
 
同宣言を事実上空文化するもので、政府は今後、より厳しい対応を迫られそうだ。先の日朝協議は拉致問題、国交正常化、核・ミサイル問題の三つの議題を並行して行い、核・ミサイル問題は七日午前に協議された。日朝外交筋によると、日本側は席上、核兵器と核開発計画の一切の放棄に加え、弾道ミサイルの全面廃止を要求した。しかし、北朝鮮側はこれを拒否するとともに「ミサイル発射のモラトリアムはないと思ってほしい」と通告、いつでもミサイルを発射する用意があるとの立場を示した。
 
日本側は日朝平壌宣言の履行を迫ったが北朝鮮の態度は変わらなかったという。
 
日朝平壌宣言には「(北朝鮮は)ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三(平成十五)年以降も更に延長していく意向を表明した」と明記しており、日本政府関係者は「北朝鮮は宣言を破棄する意思を明確にした」と警戒感を強めている。拉致事件解決に背を向け続ける北朝鮮が、ミサイル問題を引き合いに一層強硬な姿勢に出たことで、日本国内では経済制裁などの「圧力」を求める世論が高まるのは必至だ。麻生太郎外相も十日の記者会見で、北朝鮮に対する「圧力」に関し「役所(外務省)の中でこれとかあれとか案が出ているのは確かだ」と述べた。
 
北朝鮮の核・ミサイル問題については日米中などの六カ国協議でも協議されており、北朝鮮がミサイル発射凍結を拒否する姿勢を示したことは、協議の行方にも影響を与えそうだ。北朝鮮は平成十年、「テポドン1号」(射程約二五〇〇キロ)の発射実験を行い、ミサイルの一部が日本上空を通過して太平洋に着弾している。

既に、北朝鮮側から日朝平壌宣言の破棄を宣言されている。それに必死にしがみ付いているのは小泉政権の方だ。逆に、国交正常化による経済支援を心から欲する北朝鮮がここまで言ってのけるられるのは、日本側の足元を見ているからに他ならない。経済制裁を実行しない言い訳の一つである「日朝平壌宣言を履行させる為には、北朝鮮の反発を招く経済制裁はすべきではない」、この理屈は完全に破綻している。
 
ところで、ブログランキングの常に上位に属する「グースの勿忘草」ではこの記事を受けて、こう発言している。小泉信者ブログの一つ。
 
◆「破棄された平壌宣言」
(http://sky.ap.teacup.com/deep/123.html)

これもちょっと変なニュースです。北朝鮮がミサイル実験を行う意思を示したということは、平壌ピョンヤン)宣言の空文化ではなく、「宣言の破棄」と表現するべきなんです。それとも外務省から「破棄」と言うなと釘でも刺されたのかな?
 
テレビのニュースを見た感じでは、外務省は北朝鮮の交渉戦術ではないかして分析するなんて悠長なことを言っていますが、こんなことをやってるようではダメ。その場で「宣言を破棄するのかしないのか?」と問い詰めなければならない局面です。というのはなぜかと言うと平壌宣言が存在するのと、しないのでは「交渉の前提」が変わってくるからです。

平壌宣言
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html
 
具体的に言うと、北朝鮮が「平壌宣言を破棄する」ということであれば、「日本が北朝鮮に援助を行うという合意」も同時に取り消されることになります。つまり、日本には「援助をしない」、あるいは「国交正常化をしない」という選択肢も出てくるのですから北朝鮮と援助の方式などについて協議する意味がなくなるわけですね。
 
協議の席でこういうプレッシャーをかければ「ミサイル凍結破棄」について北朝鮮が取り下げた可能性もあるのですから、外務省の失態と言われてもしかたがない。少なくとも「交渉がへたくそ」という批判は免れないでしょう。

外務省の交渉方法があまりにもマズい、という主旨には大筋で賛成する。しかし平壌宣言の破棄は、これまでの対北朝鮮外交政策の失敗を認めたくない小泉政権にとって許されぬ事態。それが外交交渉に影響しているのは間違いの無い事実だから、外務省の責ばかりを問うのは誤りである。というか、こういう失政に関して小泉政権ではなく、外務省の失態のみに言及するのは典型的な「小泉信者」の論法だね。
 
しかもこう続ける。

■結果オーライか?
もっとも現在の状況は日本にとって悪くはありません。日本側としては、「北朝鮮平壌宣言を破棄した」と宣伝するだけでよいからです。この作戦の場合、展開としては二つ考えられます。
 
(1)北朝鮮側が何の反応もしなければ「破棄」が既定事実となり、交渉決裂が確定→経済制裁へ。
(2)宣言の破棄はしていないと反応すれば、再協議を申し入れ、その場で関係者に発言を訂正させて「ミサイル実験は凍結が確定」→交渉の主導権を握る。
 
これならば最悪でも現状維持。どうころんでも日本国の不利にはなりません。要するに、平壌宣言に違反するような発言をしたことで、北朝鮮側が不利になったということなんです。問題なのは、日本政府や外務省にこのチャンスを生かす交渉能力があるかどうかになります。
 
■最悪の手順とは
 国益を損なう反応はこの二つ。
(3)小泉首相が「北朝鮮の発言は平壌宣言を破棄したものとは思っていない。これからも粘り強く交渉していく」というような声明を出すこと。これは最悪。
(4)何事もなかったかのように次回協議の日程を交渉する。これも悪手です。
 
この二つが何故いけないのかと言うと、積極的にしろ消極的にしろ、平壌宣言でミサイル実験は認められているという「お墨付き」を与える効果があるのです。これをやっちゃうとミサイルを認めた分、現状よりも悪くなります。
 
■今後の展開
 ことなかれ主義の外務省ですから(4)の「何もしない」という方法になるような予感がします。(3)をやるほど馬鹿ではないと思いますが。

前述した通り「日本側の方が平壌宣言を存続」を望んでいる現状がある以上、(1)(2)の作戦は考えられない。近頃、朝鮮総連施設の課税や、北朝鮮への不正輸出事件への操作で一見圧力を掛けているに見えるが、日本国内のガス抜きレベルのものでしかない。平壌宣言の破棄を日本から宣言しようとはせず、足元を見られている以上、この程度の圧力は北にとって屁でもないだろう。実際は、中途半端なガス抜きを見せただけで(3)の「北朝鮮の発言は平壌宣言を破棄したものとは思っていない。これからも粘り強く交渉していく」というとんでもない馬鹿な事をやろうとしているのである。しかも拉致事件の犯人をわずか数人の工作員に押し付けて、北の言うがままに横田めぐみさんを初めとする未帰還拉致被害者の死亡を認める。「横田めぐみさんだけは帰してくるんじゃないか」という希望的観測を述べる人もいるが、はっきり言って甘過ぎる。何故そんな事態に至るか。北朝鮮が悪いのは当たり前の話でわざわざ強調するまでもない。そんな事を許す、稚拙な外交交渉を行ってきた小泉政権の存続を認めている我々日本国民に責任の所在はある。