平壌宣言とは何か

日朝平壌宣言(外務省HP)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 
双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 
双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
 
双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

拉致問題を扱う某掲示板で、この平壌宣言の「請求権」を著しく勘違いしている人がいたので、こりゃマズいと思い、国会質問等を長々と引用して説明してみる。
 
◆第156回国会 決算行政監視委員会第一分科会 第2号(平成15年5月20日(火曜日))
(http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/004115620030520002.htm)

○茂木副大臣
個別の問題について申し上げますと、例えば、北朝鮮の方が、NPTから脱退する、そういう宣言をしたり、守っていない側面、こういうのもある、このように思っておりますが、むしろ問題なのは、北朝鮮が守っているか守っていないか、こういうことについて判断することよりも、守らせる、そして、この文書に戻って北朝鮮がしっかりした対応をする、そういうことを働きかけていくということだと思っております。
 
○西村分科員
にせ札をつかまされたようなものではありませんか。核の問題は、アメリカと我が国にとって重大な安全保障上の問題であります。その約束を、署名した昨年九月十七日当時も守っていなかったし、現在も守っていない。守っていない者が守るという約束をしたということは、うそをついたということであります。この宣言、うそをつかれて、例えばにせ札であると。相手は現在も守っておりません。守ってもらうようにしていただくという希望は結構ですが、それをいつまでも言っておれば、日本だけが守ることになるのではありませんか。すなわち、数兆円に及ぶ金を北朝鮮に渡す、その北朝鮮は核ミサイルをワシントンに届く目的を持って開発しているという中で、日本が世界最大のテロ支援国家になり、世界最大の不安定要因、危険要因を生み出す国家になるのではありませんか。もうぼつぼつ、これを守っていただくという発言は日本政府からなくしていただきたい。なぜなら、相手は守っていない。こちらは守っていただくと言っている。ということは、小泉内閣が続く限り、相手にはお願いするだけ、こちらは約束したことを履行するということになるのではありませんか。

○西村分科員
よくわかりました。だったら、冒頭の質問で、この共同宣言は法的に効力はない、つまり、我が国を法的に拘束するものではない。そして、小泉さんは拘束しておるでしょう。しかし、もう一人の署名者の金正日という男は何ら拘束されていない。だから、どうでもいい問答なんですよ。どうでもいい問答なんですから、日韓の方式と同じかどうかを外務省が決めたわけでもないんですから余りここでは言いませんが、やはり記録にとどめておかねばならない事態がある。北朝鮮という国家は、一九七〇年代までは韓国の経済を凌駕しておった。その前提に電力がある。この電力というものがどれほどすごいものであったか。戦前、当時の日本の最大出力を持つ水力発電所は四万五千キロワット。日本が昭和七年に完成せしめた赴戦江の発電所は二十万七百キロワットです。それに続いて、昭和八年から開始された同じく長津江の発電所の総出力は三十二万六千五百キロワット。さらに、昭和十二年に着工された発電所は三十三万八千八百キロワット。それから水豊ダム、これは実に七十万キロワットであります。その当時、日本国内の最大出力は四万五千キロワットであります。こういうことを、すべて向こうはとっていき、この電気に基づいて――この電気は、半分以上は民間の朝鮮の方々の家に送電されるとともに、四〇%を超える残りはチッソ工場、世界最大の重化学工業地帯を日本がつくって、二百人の寒村であった部分に、そのダムができてから十八万人の工業都市ができたわけですね。これを日本国として放棄できますかということは私は申しておきます。


これが→水豊ダム。この言葉で検索してヒットしたページを色々調べてみると、当時の朝鮮半島満州・台湾を統治していた時代の日本の国力に素直に驚きます。

満州国の遺産―歪められた日本近代史の精神

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一応、満州国は独立してましたけどね。この本はオススメです。
 
それはさておき、つまり小泉前首相は、戦前の日本人達が莫大な国会予算を注ぎ込んで作った財産を誰の断りも無く勝手に放棄し、あまつさえ北朝鮮に経済援助を与える約束をしたのです。これが平壌宣言の正体。そして「五人を除く日本人拉致被害者は全て死亡した」という前提の下に、拉致問題は解決したとする北朝鮮の主張を何ら検証する事もなく受け入れ、国交正常化にひた走ろうとしたのが小泉政権の正体。当初は、この五人ですら北朝鮮に戻す約束をしていたのです。
 
しかし、こんな事は今更述べるほどのものでは到底無く、拉致問題に関心を持つ者なら共有されている認識だとばかり思っていました。しかし調印から四年以上もの月日が過ぎ、これがいかにトンデモないものであるかを忘れてしまった人が多いようです。何より、小泉信者が「前総理は“拉致問題の解決なくして国交正常化なし”と言っており、宣言にもそう書かれているから心配する必要は無いではないか!」と言い続けてきました。支援者の中にも、彼らの勢いに押され「救出運動を国民に広める為には、高支持率を誇る小泉さんへの批判を控えるべきだ。その窓口を広げる為にも、経済制裁の発動への賛同を押し付けるのはよそう」という発言をするものが現れ、この宣言文の異常さを指摘する声は急速に萎みました。