日本の“対北朝鮮支援”のカラクリ その4

自分の文章はグダグダと長くなりがちなんで、まずは、このカラクリについての結論から先に書きます。
 
「六者協議共同文書で約束した重油100tの支援そのものが壮大な釣りであり、アメリカ・中国・ロシアは最初からまともに支援するつもりはない。しかし極東の一時的な安定を得る為日本に対して日朝平壌宣言による国交正常化を促し、対北経済援助資金を拠出させる。」というもの。
 
「核」だけで北支援しないで 拉致被害者家族会が訴え

拉致被害者家族会などは12日、東京で緊急集会を開き、6カ国協議北朝鮮が核放棄に向けた初期段階措置の見返りとして大規模なエネルギー支援を求めたことについて「核だけで重油1リットル、電気1ワットたりとも出さないで」と訴えた。

北朝鮮への「重油5万トン支援」、露は加わらず

旧ソ連時代に北朝鮮国内に建設した発電所の更新など、いくつか案がある」とし、別の形でエネルギー支援を行う用意があると表明。また、共同文書について、「朝鮮半島非核化の第一歩となる」としつつも、「完全解決までの道のりは長い」との見通しを明らかにした。

ブッシュ大統領「拉致置き去りにせぬ」 日米電話首脳会談

拉致問題について大統領は「日本の懸念は十分理解している。(2005年9月の)6カ国協議共同声明全体がバランスのとれたかたちで実施されていくことが重要だ」と述べた。官邸筋によると、大統領は「拉致問題を置き去りにしてはならない。日本が孤立することはない」と強調したという。

拉致問題の早期解決を 6カ国協議で自民特命委

自民党は16日午前、拉致問題対策特命委員会(委員長・中川昭一政調会長)を党本部で開き、北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の結果について佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長から報告を受けた。出席者からは拉致問題の早期解決を求める声が相次いだ。
 
中川氏は「安倍晋三首相のはっきりした対応方針が内外に示された。(協議は)寝ずの交渉だったと聞いている。拉致被害者家族は残念だったと思うが、一歩も引かなかったことは今後につながっていく」と評価した。中山恭子首相補佐官は「1日も早い拉致被害者全員の帰国を目指して対応している」と強調した。
 
増元照明拉致被害者家族会事務局長は「戦略的合意であると期待している。首相は経済制裁を解除することなく圧力をかけながら対話を継続してほしい」と述べた。

対北朝鮮、米はエネルギー支援せず…人道援助に限定

米政府は、北朝鮮が第1段階として取る核施設の「活動停止・封印」への見返りとなる重油5万トン相当の支援については、韓国が単独で実施すると解釈している。
 
第2段階の「無能力化」に対する重油95万トン相当の支援については、〈1〉重油95万トンの換算価格である約4億ドルを、日本、ロシアを除く米国、韓国、中国の3か国で約1億3300万ドルずつ均等負担する〈2〉中国はインフラ整備などの経済支援、韓国はエネルギー支援、米国は人道支援を、各負担分の限度内で実施する――との基本方針に基づき、関係国と交渉を進めるという。

中国外相、拉致問題で協力 衛星破壊に理解求める

来日した中国の李肇星外相は15日午後、河野洋平衆院議長と都内の議長公邸で会談し、先の北朝鮮核問題をめぐる6カ国協議での共同文書採択を踏まえ、拉致問題を念頭に「日本が北朝鮮に対して抱いている関心事は中国も理解している。今後とも協力する考えだ」と述べ、同問題解決を目指す日本側に協力していく意向を示した。

重油100万tと言ったって、せいぜい400億円程度のものらしいね。北朝鮮が全ての各施設の各施設を閉鎖するのに対して、それほど莫大な金額だとは思えない。もちろん閉鎖に関する実効性には疑問が残るし、経済が疲弊しきった北にとって400億は喉から手が出るほど欲しいものかもしれないが。しかしこれまでの報道を見る限りでは、韓国に最初の5tの重油を出させるだけで、残りの95t分に関して他国はまともに支援金を拠出するつもりはないように思える。
 
『では、これなら「拉致問題の進展が無ければ決して支援はしない」としている日本政府の態度と合致しているのだから騒ぐ必要はないではないか』という声もあるだろう。しかしこれまでのエントリーで触れたように安倍政権は「拉致問題の進展」の定義をボカしたままであり、米中韓で均等分担するという人道支援に日本が参加する危険性は完全には消えていない。そして何度も繰り返し述べているように、平壌宣言による国交正常化の為の準備を重ねている。むしろ、こちらの方がメインだろう。400億円など端(はした)金に見える、兆単位の経済支援という名目の賠償金が日本から支払われる事になる。そもそも平壌宣言は、日本が北朝鮮に残した約8兆円ともいわれる対外資産を放棄する文面をも含んでいるのだ。
 
そこで、一体誰がこの計画の主体になっているかと言えば、やはりアメリカなのだと思う。六者協議の直前にヒル国務次官が来日して、自民党の外交部会にまで顔を出した理由。それは北朝鮮に対する支援をスムーズにさせる為、党内の実力者達に脅しを掛けて話を通しておく必要があったからだ。かと言って「アメリカは北朝鮮の核の脅しに屈し、日本を裏切ったか」と問われれば、案外違うのではないかと考えている。ブッシュ大統領は「拉致問題の解決の為に協力する」と言明しているし、北朝鮮テロ支援国家の指定を容易に外すとは思えない。沖縄にステルス戦闘機の配備を開始した姿勢からは、一筋縄ではいかない懐の深さすら感じる。ロクに戦車すら動かせない、餓死者を何百万人も発生させてしまうような貧乏国家に簡単に振り回されるほどヤワな国ではない。根拠の無い希望的観測かもしれないが、アメリカは一時的な時間稼ぎをしているのでは?しかし彼らの言い分は「日朝部会を設立し、そこに北朝鮮を引っ張るまでは手伝ってやる。だが、拉致被害者の返還を要求するのはお前達自身、日本政府の交渉能力でどうにかしろ」という事なのだと理解している。
 
つまりは、拉致問題を解決するチャンスは与えるから、北朝鮮を大人しくさせる為の金はお前がちゃんと出せよ?というのがアメリカを始めとする各国の態度であり*1、これこそが六者協議で決定された「日本の“対北朝鮮支援”のカラクリ」なのだ。

*1:中国外相も拉致問題を“念頭”にしていると、日本側が勝手に解釈しているだけだ