「華氏911」期待外れだったっすよ、町山さん

一昨日の感想の続き。
一言で言うと、「サムい」。
これは映画として、映像作品として致命的です。ちっとも笑えるシーンが無いし、グロ画像に期待しても、WTCに飛行機が突っ込んでいくシーンすら無い。下からビルを仰ぎ、駆けずり周る群集をサラっと流すだけ。これって同国人に対する配慮でしょ。いや配慮と言うより、同国人の神経を逆撫でにしたという批判を本能で恐れて腰が引けちゃったんでしょ?所詮、電波芸人なんだからさ、WTCが倒壊するシーンとブッシュの笑い顔をOLさせるぐらいのエグい演出が出来なくてどーすんのよ。あのサヨクの井筒監督ですら、テレ朝の虎ノ門の批評コーナーで「これじゃブッシュ大統領も小泉総理も何のダメージがない」「NHKのドキュメント班に撮らせた方がが百倍マシ」とめったくそにケナしたそうですが。政治の左右じゃなくてさ、純粋に映像テクニックの問題。これならTBSのニュース23の方がよっぽど良質な(?)プロパガンダ番組を作れるって。まあ、そもそもこれは“アメリカ人の、アメリカ人のよる、アメリカ人の為の映画”なんだから、アメリカ市民でも無い映画評論家や、共産主義国にシンパシーを感じる類のマスコミに煽られて、勘違いした日本のサヨクがムーア賛美している事自体が滑稽なんだけどね。去年の終戦記念日ニュース23の特集「殺すな」を見て勉強してご覧よ。俺ですらトラウマになりかねんぐらいの出来っぷりだったんだからさ(苦笑)。
 
「いや、これはブッシュが、911テロとは関係の無いイラク戦争を起こした事を糾弾する為の映画なんだから、そんなのは関係無い」だって?あんな下手糞な演出でお上品なモノ作ったって、ちっともプロパガンダになってないんだったら。観客の感情を揺さぶるものを作れなかったら即負けなんだって。ブッシュとビンラディン一家の蜜月関係を伝えるのは良い。でもあのムーアの解説を聞いた観客がどう映ったかと言えば「なんだかこのコメントも胡散臭いな」と印象しか残らないんじゃないの?「ブッシュが911テロの情報を聞いた時に何のリアクションも無く、マヌケ面して訪問先の小学生と絵本を読んでいた」というシーンも売りにしてたけど、あの演出じゃ、緊張に包まれて考え込んでいた大統領の重圧というものををまず感じてしまって、笑い飛ばすどころじゃない。ムーアの解説の方がよほどウザったく思えるくらいだ。プロパガンダをやるなら、その絵本を抱えて思案にくれる姿を忠実に流すより、ひたすら顔をアップにおマヌケなテンポのBGMを流しておけば良い。「神の国発言」でマスコミにさんざ叩かれた森善朗という元首相もいたが、その報道の方がよっぽど恣意的でインチキで視聴者に対して刷り込みの強い見事なプロパガンダ作品だったよ。ところでラスト間際に登場した、あの愛国者の母親が一転、息子がイラク戦争で死んだ途端にブッシュを憎むように仕向けたやり口ってどうなんだろう。俺はその母親がブッシュに矛先を向ける事で、怒る事で幸せになるとは到底思えないんだ。あの母親はこれからどういう残りの人生を生きるのだろう。ムーアは、自分が映画の題材として利用する事で、彼女を更に苦しめるかもしれない、という想像をしてみた事があるのだろうか。
 
上映が終わって場外でタバコ吸ってたんだけど、その時隣り合ったカップルの会話が聞こえてきたので耳を傾けてみた。その、政治には全く興味が無さそうな女のコがポツリと「ねえ、なんというかあの映画って、全体的にヤラセっぽくない?」と男に話し掛けていた。こんなもんだよ、失敗作に対する反応ってのはさ。ハッキリ言ってツマンねーっす。金出す価値ねーっす>id:TomoMachiさん。
 
で、先ほど述べたようにこれはアメリカ人の映画であって、「アメリカがこれまでに起こしてきた戦争も、貧富の差が生んだ不公平も全てブッシュに押しつけるこの映画の姿勢そのものが、井筒監督を初めとする反米サヨクには受け入れられない」という事実。この錯誤に気付かないバカ信者が多過ぎるってのが今の日本の問題だわな。