日本の“対北朝鮮支援”のカラクリ その1

六者協議が終了した。以前から「六者協議は日本の金を出して北朝鮮を宥める為の儀式である」と言ってきたが、寸分違わずそうなりつつある。日本外交史上に稀に見る大敗北であるが、この状況を目の当たりにして、それを理解出来ていない保守系ブログがネットに多くて驚いた。「極右評論」などはその名の通りのガチガチの国粋主義を標榜しているにも関わらず、「拉致問題が進展しない限り、支援も制裁解除もしない」という安倍総理の言葉に何ら疑いを持たず、去年秋の靖国神社例大祭の参拝断念をも支持していた過去を持つ。何ともまあ、寛容な。その常連達も「終戦記念日例大祭に拘る必要はない」と、どこぞの支持者*1を思わせる発言をしている。
 
◆【北朝鮮拉致問題が進展しない限り、支援も制裁解除もしない - 日本政府(共同通信

安倍晋三首相は14日午後の衆院予算委員会で、6カ国協議で合意した北朝鮮への重油支援について、初期段階措置の見返りの5万トンだけでなく、次の段階の95万トンも「拉致問題に進展が見られなければ出すわけにはいかない」と述べた。
 
また、「進展したかどうかは北朝鮮ではなく、われわれが判断する」と強調した。首相はさらに、北朝鮮の貨客船「万景峰号」の入港禁止など日本が独自に実施している経済制裁に関し「現段階で解除する考えはない」と言明。拉致問題に対する北朝鮮の出方を見極めた上で、今後の対応を検討する考えを示した。民主党原口一博氏の質問に答えた。

この記事を取り上げ「前原前民主党代表に続いて、今度は原口氏の登場である。何か民主党の若手・保守寄りの政治家も情けなくなってきた。詳しくは書いていないが、前回と同じような質問だったのでしょう。」と切り捨てているが、この原口議員自身は時間終盤のアレな質問を除けば、概ね良い仕事をしていたと思う。拉致議連に所属している事もあって、特定失踪者問題についても鋭いツッコミを入れてたし。というか、衆議院TVに動画でその答弁が公開されているんだからさ、それ観ようよ。
 
原口議員の質問の内容からすると安倍総理の答弁に関してはこの読売新聞の記事の方がニュアンスが近いのではないかね?
 
北への支援決定、「拉致」看板の安倍政権に重圧

安倍首相は14日の衆院予算委員会で、北朝鮮への重油支援について、「5万トンも95万トンも、拉致問題の進展がなければ当然、出すわけにはいかない」と強調した。北朝鮮が第1段階としてとる核施設の「活動停止・封印」の見返りの5万トンだけでなく、第2段階の「無能力化」の95万トンについても、拉致問題の進展が支援の前提になるという考えを表明したものだ。
 
ただ、質問に立った原口一博氏(民主)が「何をもって『進展』とするのか」とただしたのに対しては、首相は「判断するのは我々だ」と述べただけだった。

原口議員は「うらさんの祈りはダイヤモンドになって―健気に生きた明治の母」という特定失踪者の家族が出版された本を手に取り、一民間人が問題解決の為に動き回らねばならない現状はおかしいのではないか、政府の支援が無いのはどうしたわけだ、と安倍総理に訴えているのだ。「拉致被害者だけではなく特定失踪者についても究明していく」と政権発足したにも関わらず、新たに拉致認定したのは松本京子さんただ一人。その政府の行動は発言とはあまりに乖離している。(詳しくは、id:kikori2660:20061105#1162724078を参照)そして寺越武志さんをも拉致認定しないのはどうした訳か。誰も、答えない。
 
拉致問題の進展」をどう考えているのか?という質問は、北朝鮮がどうのこうのというよりは、むしろ「安倍政権が特定失踪者を拉致認定しないのは、問題進展のハードルを下げているのではないか?」「進展の定義とは?」という意味で聞いているんではないかと思うのだが。そもそも多くの人が忘れかけているが、一体いつの間に、100万tの重油は「進展」だけで供給する話になったんだ?ハードルを勝手に下げんな、安倍ちゃんよ!進展の定義はもちろん、核施設のリストや封鎖・査察の手順をハッキリさせずに日本国民を騙くらかそうたって、そうはいかない。
 
この「何をもって拉致問題を解決したと見做すか?」という疑問に対しては、小泉政権から安倍政権になっても一向に変わらず、無視し続けているというのが現状だ。それが示す事を、救出運動支援者ははっきりと自覚せねばならない。つまり「拉致認定を出来るだけ減らしてハードルを下げ、北朝鮮と国交正常化をし易いようにする」というのが日本政府の一貫した方針なのだ。これは日朝平壌宣言を破棄しようとしない政権が必ず到る、亡国への道である。

*1:ヒント:前総理