ペールゼン・ファイルズ5巻感想

中身を鑑賞する前に、ライナーノートを見る。スタッフインタビューは、シリーズ構成・脚本の吉川惣司氏。まだ最終巻に達していないというのに、既に言い訳じみた反省というか敗戦の弁。こりゃヤベー予感がする。この本のインタビューでも「赫奕たる異端」の“失敗”に対する反省を赤裸々に語っているわけだけど、それを思い出したボトムズマニアは少なくないと思う(ボトムズマニア自体が少ないだろうけど)。……最終巻のライナーノートは高橋監督自身もグズグズ言って終わるような気がしてきた。
 
以下ネタバレ。
 
第9話「ダウンバースト」。前門にバララントATの大軍、後門には全てを凍てつかせる超寒気団の襲来!というわけで、デブがマイナス200度でもATが動くPRL(ポリマーリンゲル液)の配合を行なう為に四苦八苦する所が作劇の肝。しかし、そのバララントや寒気団から脱出するわけでもなく、ひたすらドンパチ。その途中でダウンバーストが発生し、バララントのウン百ものファッティーは全滅。バーコフ小隊のスコタコは無事で生き延びる事が出来たわけだ。
 
でもそれって、中のパイロットが寒さに強かっただけで、ATのPRLの配合比が優れているかどうかとは関係ねーだろ。PRLが凍っちゃうとATの暖房も止まっちゃうんだよ!という設定があったにしても、ATの中のキリコ達はバララントの兵士と同じく凍り付いてたし。更にワケが分からない事に、ワップ少尉のトータスはピンピンしていて、動けずにいる小隊のATをブン殴って回るという。コイツの方がよっぽど異能生存体だろ!というツッコミを入れたくなる。つーか、それ以前にあんな短時間で止んでしまう吹雪なら、ATをいじくって大軍と撃ち合ってないで、基地で籠城戦を仕掛ければ済んだ話だと思うんだけど。
 
第4話の「死の谷」同様、シチュエーション作りに凝るのは良いとしても、それがストーリーとしてまとまっておらず、結局何がやりたいんだかサッパリ分からん。
 
でも第10話「戦略動議」になるとそこそこ面白くなってくる。この物語の黒幕、情報省次官ウォッカム自らがキリコ達の前に登場。でもこうやって姿を現すという事は「実は黒幕じゃない」ってオチだな(笑)。これで、ルスケ(ロッチナ)に殺されるフラグは立ったと見ている(もちろん真の黒幕はワイズマン)。メルキアの国家予算を遙かに越える軍事費を投入して、バララントの要塞惑星モナド攻略を訴えるウォッカム。反対派の国防相まで謀殺してまで計画を推し進める、彼の野望の原点は何なのか。……そこを、「実はワイズマンに操られてました〜」というオチは安直なので止めて欲しいです。大丈夫ですよね、吉川さん?
 
で、次回はデス・スターに突撃して核融合炉を破壊しに行く(違う)、キリコ達が率いる特殊部隊ISS。予告ではこの5人が殴り合うシーンがあったりして、いよいよ本格的に異能生存体の生存競争が始まるか!とワクワクモードなんだけども、その期待に応えてくれるか。大丈夫ですよね、高橋カントク?
 
それはさておき、この5人の中でザキのみが「遺伝的ではない、人工的な異能生存体」だという事実も判明した。……という事は「野望のルーツ」で若き日のペールゼンがワイズマンのプラントで見た、あの培養液に浸った赤ん坊の正体はザキなのか!?これは思わぬ展開*1。話数を重ねる毎に、すっかりお稚児さん扱いになってしまったこのキャラが最後で生きてくるのか。ここまで来たら最終巻まで付き合ってやるから頼むぜ!ボトムズスタッフ!!

*1:アレがキリコではなくザキだとしたら年齢的に無理があるように思えるが、実はこの2人は1歳しか違わなかったりする。