新聞拡張員ゲンさんの嘆き

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昔、日経新聞新聞奨学生というのを一年間だけやっていた。新聞拡張員って、専業(販売所の従業員)とは違って、同じ職場で働いている人なのに交流は全く無いし、お互い関わりを持とうともしていなかったな。奨学生は新聞配達や集金の合間に学校へ行くのが精一杯で、拡張などやる暇もテクニックも無かった。でも日経新聞の場合は、ある程度の目的を持って購読する人が多く、配達地域がわりと富裕層の多い杉並区という事もあって、朝日や読売のようにガツガツと客を掘り当てる必要も無く平和なもんだった。何せ客の方から取りたい、と電話を掛けてくるぐらいだったし。でも就職活動の為に申し込んでくる大学生からの申し込みは嫌だったなあ。集金しようと思ってもロクに家にいないし、払う金も持っていない。あくまで面接の為に読んでいるだけだから、採用された途端に購読止めちゃうし。話は戻って、それでも拡張員じゃない、専業の人でも正体不明な人はいたなあ。専売所でキッチリ仕事はしていくけど、本名も住所も絶対に明かさなかったオジさん。何かしら脛に傷のある人だとは予想出来たけど、いちいち問い詰めたりしないのが新聞屋のルールだった。いつも壊れそうなラジカセでカーペンターズサイモン&ガーファンクルを流しながら、黙々と作業をしていたのが印象に残っている。自分も時折、そのテープを借りたりしていた。でも本当にそれだけの仲だったけど。翌年には、勉強や就職活動に専念する為に新聞奨学生は辞め、一人暮しを始めた。そして就職が決まりかけた頃、ふと専売所に電話をかけてみると、既にその専業のオジさんは行方不明になっていた。でももちろん騒ぎになるような事でも無かった。まだあのラジカセは現役なんだろうか。
 
話は変わるがその専売所の所長は、従業員や奨学生から“超ドケチじじい”と呼ばれ、嫌われていた。「俺は元特攻隊員だったが、出撃直前で機体が故障し生き残ってしまった」というのが口癖だった。でも、今にして思う。あれ、ホラ話じゃねえの?もう既に亡くなってしまったそうで真偽の確かめようも無いが、御国の為に生命を賭した人間であってもだ、あのケチっぷりじゃね。未だに恨みを持っている。食い物の恨みは恐ろしい。これだけは許せん。続く。