対北朝鮮・言葉遊びはもう沢山

◆政府、追加制裁など検討開始…北朝鮮の国連決議拒否で
(http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060716it11.htm)

日本政府は16日、北朝鮮が国連安全保障理事会の対北朝鮮決議を拒否したため、追加的な制裁措置などの検討に入った。安倍官房長官は16日夕、<1>日本独自の追加的な制裁<2>安保理決議を根拠とする各国との連携――について検討するよう安藤裕康官房副長官補に指示した。これを受け、関係省庁の課長級が同日、都内で具体的な協議を行った。政府は5日の弾道ミサイル発射当日、「当面の措置」12項目を決定した際、外国為替・外国貿易法に基づく金融制裁などは、国連安保理の動きを待って、検討することにしていた。効果的な金融制裁には、関係国の協力が不可欠だからだ。政府筋は「中露両国も、賛成した以上は、決議の実施に協力せざるを得ない。国際社会が連携する素地ができた」と語る。

これに関しては文句無いね。でも制裁の「検討」だけならこれまでもやっているわけだから。政治用語のそれ(=結局何もやらない)では困る。

ただ、政府は、実際に追加的な制裁措置を発動するかどうかは、北朝鮮の今後の対応を慎重に見極めたうえで判断する。

結局また「慎重に見極め」るんだ?それじゃあ北朝鮮がミサイルをもう一発を撃たない限り、全面的な経済制裁には着手しないんだ?

また、安倍長官は16日、決議について「すべての国連加盟国に対し、制裁措置を取ることを要求する、拘束力のある強い決議で、国際社会の断固たる意志を示せた」とする談話を発表した。談話は、北朝鮮に対し、<1>ミサイル開発の即時停止と発射凍結の再確認<2>核問題をめぐる6か国協議への無条件復帰<3>生存している拉致被害者全員の即時帰国――を呼びかけた。政府は今後、7月末にマレーシアで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)などでも、ミサイル問題を取り上げる方針だ。

国連加盟各国に、制裁への協力を求めるのは良い。これにも文句は無い。繰り返し述べている事だが、それならば、まず日本が率先して全面的経済制裁を発動しなくては説得力が無い。そもそも北朝鮮との貿易額で言えば中国・日本・韓国がトップ3で、普通に考えればその中韓の協力は望めない。ならば“国際社会が連携する素地”を作るつもりなら、やはりその発動が前提条件となるはずだ。北朝鮮のミサイルを買うのは中東だが、その資金や機材は日本から得たものであったはずだ。それを止めずして、一体何を止めるんだ?先日に行われた小泉・ブッシュ会談の場で、ブッシュは「金融制裁に日本も同調してやらないか?」と持ち掛けられた際、小泉は「自分の政権では出来ないが、次の政権ならば可能だ」と応えたという。何故?何故なんだ?
 
◆日本、安保理で初の主導 岡崎久彦元駐タイ大使
(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/10990/)

制裁に強制力をもたせる国連憲章7章を削除したうえで国連安全保障理事会北朝鮮に対する非難決議が採択されたが、この決着は評価できる。強制力のある決議が採択されても、中国が実質的に制裁を行うかどうかは疑わしく、実際に制裁を主導するのは日米だからだ。日米は決議で国連から制裁の“お墨付き”を得たことになり、目的は達したといえる。北朝鮮が再びミサイルを撃った場合、日米はさらに強い制裁措置に入ることができる。再発射の抑止にもつながるだろう。北朝鮮がミサイルを発射した理由として、米国との直接対話を求めていることが挙げられている。だが、ミサイル発射で事態を打開しようとする無理は通らないことを、北朝鮮に理解させることにもつながった。日本は初めて、国連安保理の場でイニシアチブを発揮したといってもいい。日本外交の従来の型では、事件が起こると「まず状況を把握してから」と各国の出方を見る。そのうち米国が態度を決め、それに付き合うというパターンだった。日本は今回、北朝鮮のミサイル発射後、迅速に制裁決議案を安保理に示し、安保理で根回しを進めコンセンサスをつくった。外交には「先(さき)んずれば人を制す」ということがある。中露は日本案に反対したが、日本の最初の根回しが基礎となり、そこを起点に妥協をしていったので、良い“歩留まり”で決着がついたといえよう。こうした結果を得られたのは、「小泉―ブッシュ」の緊密な日米関係のもと、「米国は絶対に同調してくれる」という確信を日本がもつことができたことが大きい。北朝鮮は「中国は庇護(ひご)せざるを得ない」という読みであえて発射した。安保理の協議の過程をみても、北朝鮮が頼りにできるのは中国だという形がはっきりした。ロシアは中国とは別の計算で、国際社会で発言力を維持するために米国と距離を置いたのだろう。北朝鮮の現体制が続くのなら、ミサイルや核、拉致問題の解決が今後とも主題となる。日米は今後も連携を強め、北朝鮮に圧力をかけていかなければいけない。  

産経新聞の、今回の対北朝鮮決議案に関する日本外交をやたら持ち上げるマンセーっぷりに少々辟易。特にこの岡崎コラム。特に反米派でない俺でも、得意になって「俺たちのバックにゃアメリカがいるんだぜ!」と虎の威を借りておきながら「どうだい、日本がイニシアチブを発揮したぜ!」と言い切ってしまう論調に、情けなさを感じずにはいられない。もちろん、自身の力を把握した上で上手く立ち回る技術を否定するものではないけどね。だが少なくとも、櫻田淳の言うような「悠然たる外交」とは程遠い。これに関してはこの方の意見が自分にとても近い。
◆日本がもつべき確信とは?
(http://kenjiokuda.cocolog-nifty.com/blog/2006/07/post_79bd.html)

こんなもん、「自分のバックには強力な団体が付いてるんだぜ」と強がる、弱虫の心根ではないか。日本人ってこんな人たちばっかりになったんだね。
 
イラクへの侵略戦争を、いち早く勝手に「支援する」と言ってしまった小泉。このとき、「一定の理解はできる」と表明するスタンスを取れなかったのは痛かった。この頃から、小泉ネオコン従米応援団たる自称保守らは、今なお「米国は絶対に同調してくれる」「まさか米国に見捨てられたりしないだろう」「見捨てられなかったよ、今回、確信したよ」などと、幼稚な揺れる思いを持ち続けているのだ。

もっともイラク戦争に関するスタンスは全く違うのだけど。
 
◆Let's Blow! 毒吐き@てっく「日本は、太郎ちゃんは負けちゃいないよ」
(http://tech.heteml.jp/2006/07/post_624.html)

'' Bolton said that made it just as binding as an explicit reference to the UN Charter's provision for sanctions.
 
ボルトンアメリ国連大使によれば、7章参照削除に変わって挿入された文言(acting under its special responsibility for the maintenance of international peace and security)が制裁(sanctions)を担保するとのことだ

うーん、結局文章の解釈を巡って、不毛な論争で時間を食うだけじゃないかと。それを破った際の罰則の無い条項なら尚更。
 
◆満場一致…国連対北決議拘束力あるか
(http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=77908&servcode=200§code=200)
半島系の中央日報の記事。

北朝鮮ミサイル発射について、15日に採択された国連安保理決議が実質的な拘束力があるかについて注目が集まっている。日本と米国は「拘束力ある決議案」と主張しているが、韓国政府は多少あいまいな立場だ。宋旻淳(ソン・ミンスン)青瓦台(チョンワデ、大統領府)外交安保室長は16日の記者会見で「韓国政府としては外交的方法で問題を解決することに努力していく」と述べている。
 
◆日本の立場=日本政府は決議文が満場一致で採択されたことに大きな意味をおいて歓迎した。政府スポークスマンである安倍晋三官房長官はこの日の談話で「制裁を含む拘束力ある決議が必要だという日本の立場が反映された」と主張した。「すべての国連会員国に制裁措置を取ることを要求する拘束力ある強い決議であり、国際社会の断固たる意思を見せた」と評価した。外務省のある幹部は「各国のミサイル部品移転禁止が義務かどうかという英語の表現をよく見る必要があるが、リクワイア(require)になっている」とし「したがって強制性を帯びた義務として解釈するのが正しい」と主張した。日本のメディアは麻生太郎外相とライス米国務長官の電話会談でも「拘束力ある決議文というところで意見の一致を見た」と伝えた。大島賢三国連大使は「実質的には国連憲章7章を明記したことに近い効果がある」と主張している。今回の決議採択以後「問題があればまた安保理に移すことができる」という点も強調した。
 
◆米国は日本と同調=ジョン・ボルトン国連駐在米国大使は「国際平和と安保維持の特別な責務の下の安保理が」という字句を持って今回の決議が国連憲章7章に言及されたのに相違ない法的拘束力があると主張している。この発言は北朝鮮が追加発射などで状況を悪化させた場合、今回の決議だけで力強い後続措置を取ることができるということを示唆したものと解釈される。米国務省のある関係者は「今回の決議は北朝鮮のミサイルと大量破壊兵器拡散防止が目的」とし、決議文採択を通じて国連会員国が意を同じくした」と述べた。米国は決議文採択に全般的に満足している。安保理15理事国が満場一致で決議案を採択し、水準も宣言的意味の議長声明よりずっと力強い決議文だからだ。ワシントンポストは「北朝鮮核拡散防止条約(NPT)を脱退した1993年以来、13年ぶりに国連が北朝鮮に加えた最も力強い非難」と報道した。
 
◆韓国政府は=宋旻淳外交安保室長は16日の記者会見で、決議文の拘束力に対して明らかな言及をしなかった。「今回の決議文で論議された措置について、すでに効果的な戦略物資統制装置を稼働中であることを確認し、こうした統制をずっと効果的に作動させていくという点を確認した」と述べた。また「日米が決議文に対して強制的措置を取ることができると見ているが、ロシアと中国は反対立場を取っている。韓国政府の判断はどうなのか」という質問には「決議案採択過程で国連憲章7章を援用する項目が抜けた過程を見れば、それがどういう意味なのかわかるだろう。言い換えれば憲章7章が強制的措置を伴う意味が強かったから除かれたとみればいい」と述べた。国連駐在オ・ジュン次席大使は「すべての安保理決議は原則的に拘束力がある」と述べている。
 
◆中国・ロシアは否定的=中国とロシアは決議文の法的拘束力に対して否定的立場を明らかにした。例えば北朝鮮とミサイルの取引を禁止するよう国連会員国に要求しているが、それを守らなかった場合に対する言及がないという点をその根拠に入れた。

そりゃま、そうだ。7章の強制性が嫌だから他の言葉に置き換えたのに「制裁」の意味合いがあると認めるわけもない。それが正しい正しくじゃなくて「いや、俺そんなの知らねーよ」と言われればそれで終わり。言葉遊びに付き合うのにはいい加減うんざりなんだ。