めぐみ−引き裂かれた家族の30年

行って参りました。渋谷のシネマGAGA!に到着したのは上映10分前で、席は会場の9/10が埋まっていたぐらい。開始直前には満席。制作会社か配給会社の人だか知りませんが、妙にギョーカイっぽい関係者がロビーに沢山居たのが目立ってました。
 
さて、映画の感想を。
 
拉致問題について全く知識の無い人にはともかく、それなりに関心を持っていた人にとっては、娘のめぐみさんの救出に心血を注ぐ、横田さん夫妻を始めとする家族会の方々の想いは既知の事。しかし特に目新しい視点は無いけれども、その知識の無い人に「事件を知って貰う、被害者家族の思いを知って貰う」という意味で、これ以上の完成度を誇るドキュメンタリーは中々作れないと思う。この映画の性格上、あまり触れる人は多くはなさそうなのであえて触れる。妻のパティ・キムと共に監督を務め、編集に携わるクリス・シェルダンの映像テクニックが凄い!横田夫妻増元照明さんに直接インタビューした映像だけではなく、ニュース番組の報道、家族会のこれまでの救出運動の記録などの様々な組み合わせ。拉致事件を扱ったドキュメンタリーの割りに、くどくど長い解説はさほど目立たない。が、まるでPVもしくはミュージック・クリップのような洗練された演出によって、突然消えた息子・娘を捜し求めて30年もの心痛を重ねた家族の真実が、余すところなく観客に伝わってくる。それはもう、あざといくらいに。たとえば、拉致された直後の横田めぐみさんの写真についても、輪郭すらボケボケになっている状態から、色々な証言が出るに合わせて序々にピンも合ってくる。もちろん自分なんかは、この写真を直接見てるくらいだからすぐに「あ、めぐみさんの写真だ」と分かったが、この演出を観始めてすぐに「うわーやり過ぎ!早くボカしを取ってくれよ」と思ったくらい。でもこれによって、わずか13歳の女子中学生をさらったという北朝鮮の悪逆非道な国家犯罪の事実をガツーンと観客に訴える最大限の効果を引き出している。この「めぐみ−引き裂かれた家族の30年(原題:Abduction(拉致)」は世界各地の映画祭では様々な賞を受賞しているが、その理由は、横田夫妻の「親子の愛の物語」への世界共通の感動によるものだけではなく、映像作品としての完成度の高さが評価されているのだと思う。横田さん夫妻や新潟の海岸を訪れて当時の状況を語る映像にしても、ちゃんとした集音マイクを使っていないせいか、周囲の騒音が非常にうるさくてどうかと思ったものだが、途中からは「これも臨場感を出す為の演出か!?」とすら感じるまでになりました。特にこの問題に興味が無い人でも(もちろん持ってしかるべきとは個人的に思いますが)、ドキュメンタリーというジャンルに関心がある人にも是非オススメの映画ですね。もっとも、日本政府(小泉政権)のこの問題に対する不作為はもうちょっと強調されて良かったのではないか、めぐみさんの偽遺骨問題に関して、わざわざネイチャー誌による、鑑定に関する疑惑を入れ込む必要があったのか、という疑問もありますが、主目的である「拉致問題の存在を知って貰う」という事に関しては、文句の付けようの無い出来だと思います。
 

上映終了後、横田さん夫妻と増元照明さんが舞台挨拶に登場。皆さん笑顔で、観客や関係者にお礼をおっしゃってました。もっと日本国民全員でこの映画を観てみよう、という機運が高まっていくと良いですね。
 
ちなみに、スクリーンには知人が数多く登場してました。ひょっとして俺も映ったりして、なんて思ってたらセリフ有りで出ちゃった。当時の俺ってこんなに太ってたっけ・・・?