今日買った本

文藝春秋3月号「小泉訪朝 破綻した欺瞞の外交」
(http://www.bunshun.co.jp/)

ウルトラ・ダラー

ウルトラ・ダラー

この本を書いた手嶋龍一氏のレポートが掲載されている。小泉訪朝の裏舞台が克明に描かれているという事で、久しぶりに文藝春秋を買ってみた。

竹内(外務次官)は(小泉)首相の平壌訪問が固まったことを告げた。なぜこれほど重大な案件を秘密裏に運んでいたのか---。出席者たちの瞳の奥には疑念が燃え盛っていた。気まずい雰囲気のなか「平壌宣言」の草稿が各局長に配布された。竹内と田中(アジア太平州局長)を除いて皆が初めて眼を通す文書だった。
 「秘のまま折衝を進めたのは総理の強い意向だった」
竹内はこう弁明した。次官室はしばし重苦しい沈黙に包まれた。
谷内(総合外交政策局長)が田中に質した。
 「この宣言には拉致という言葉がまったく書かれていないが、これでいいのか」
核心を衝かれた田中は、一瞬押し黙り、短く応じている。
 「拉致問題については別途交渉していますから---」
拉致問題をめぐる田中と谷内の永く険しい対決がこの瞬間から始まった。
条約局長は外交文書の作成に最終責任を分かち合わなければならない。このため海老原(条約局長)の舌鋒は勢い鋭角的になった。
 「宣言文は『安全保障にかかわる問題について協議を行なっていくこととした」と日朝安保委員会の設置を謳っている。ならば、アメリカ政府抜きに安保協議が進むはずがない」
だが、ブッシュ政権には一切知らせていないという。

当時の小泉総理と田中均がこれまでの前例を破り、いかに綱渡り的で危うい外交をやっていたかを如実に伝えてくれるレポートだった。田中の独走を許し、それが失敗した時の小泉の茫然とした様子、知日派アーミテージ国務副長官)を含むブッシュ政権が受けたショック。この訪朝の結果が与えたダメージが計り知れないほど大きかった事を教えてくれている。
 
平壌宣言を交わした小泉純一郎の罪を認められらずに、未だにこの行動を絶賛し続ける小泉信者は一度目を通しておいた方がいいだろう。同じく、これを引き継いでしまった安倍政権を批判出来ないマンセーさん達もだ。